サマリー
中国で電力不足による景気への影響が懸念されているが、夏場の電力不足はどの程度深刻になるのであろうか?送電最大手の国家電網は、夏場のピーク時に最大4000万kw、冬場も2800万kwの電力不足が生じるとしている。主因は、(1)石炭火力発電の逆鞘(発電価格<原料炭などコスト)による生産インセンティブの低下、(2)旱魃被害の大きい5省(湖北省、湖南省、江西省、安徽省、江蘇省)での水力発電能力の低下、などである。ただし、旱魃被害については、6月初旬の大雨で改善している。
石炭火力発電の生産能力に問題はなく、状況改善には生産インセンティブの向上が不可欠である。国家発展改革委員会は、6月1日付けで15省の非民生用電力価格を平均3%引き上げたが、利益が出る水準にはなっていない。ある程度の物価上昇を甘受してでも発電価格をさらに引き上げるか、物価への影響を避けたいのであれば、発電会社の赤字を財政から補填するしかあるまい(2008年の原油価格高騰局面で、石油精製会社に財政が補填した「前例」がある)。電力不足改善のための方法は残されている。
もうひとつ指摘されるべきは、夏場のピークには例年電力不足に陥る地域が多いことである(下表参照)。こうした地域では、リスク回避のため自家発電設備を備えている企業も多い。これらは統計には表れない発電量であり、懸念されるほど、電力不足は深刻にはならない公算が大きいと考えている。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国:第15次5カ年計画を読み解く
成長率目標は設定されず。数値目標は安全保障の優先度上昇を示唆
2026年03月16日
-
中国:成長率目標引き下げも達成は困難か
さらに強化した積極的財政政策は有名無実化
2026年03月06日
最新のレポート・コラム
-
主要国経済Outlook 2026年4月号(No.473)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年03月25日
-
中東情勢緊迫化と軍事費増加は世界経済の重石に
2026年03月25日
-
大和のセキュリティトークンナビ 第4回 社債セキュリティトークンとは?(前半)
社債投資の仕組み、社債セキュリティトークンの特性
2026年03月25日
-
コングロマリット・ディスカウントの再考察
~日本企業の定量分析から読み解く、人的資本経営と企業価値の新関係~
2026年03月25日
-
米国:原油高でも「Drill, Baby, Drill」ではなく「Drill, Maybe, Drill」?
2026年03月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

