香港のETF組成を通じた「出口戦略」の先例

円滑な株式売却を実現したカギとは?

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サマリー

◆香港では、1998年8月に香港金融管理局が株式市場介入を行った後、同年10月に「出口戦略」へと舵が切られた。実際の株式の売却は1999年11月から進められた。具体的な売却スキームとして、株式市場介入で購入した株式をETF(上場投資信託)に組成して売却するというスキームが用いられたことから、日本銀行のETF買入政策の「出口戦略」を巡る議論において言及されることも少なくない。

◆香港の「出口戦略」では、(1)外為基金投資有限公司(EFIL)の設立、(2)ETFの組成とその新規上場(IPO)による売却、(3)ETFのタップ・ファシリティによる売却、(4)為替基金による株式の保有継続、の4つが重要な構成要素となる。IPOの規模は333億香港ドルに達し、当時としては、日本を除くアジア地域において最大規模となった。IPOに申し込んだ個人投資家は18万人を超えた。

◆株式売却スキームの選択においては、個人投資家と機関投資家のいずれの需要にも応えられるという点や、売却するときに特定の個別株を選択する必要がないこと、さらには個別株のまま売却するよりETFの方が株式市場を歪めないという点などが考慮された。結果として、香港の「出口戦略」は、金融市場を大きく動揺させることなく円滑に終了した。

◆総括すると、第三者機関の設立による中立性の確保、情報公開等による透明性の確保、売却スキームの説明責任、株式の保有と管理の関係性、長期保有を促すためのインセンティブ、IPOとタップ・ファシリティによる売却額、株式の保有継続、が注目ポイントになる。香港と日本の置かれた状況は異なる点も多いが、これらについては参考になる面もあると考える。

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