2024年04月03日
サマリー
◆香港金融管理局は、1998年8月、市場参加者にとって想定外となる株式市場介入を実施した。この事例については、日本銀行のETF買入政策を巡る議論で言及されることもある。香港における株式市場介入は、ヘッジファンド等の投機筋が香港の為替市場と株式市場において大規模な投機的攻撃を仕掛けたことが背景にある。
◆株式市場介入の実施期間は1998年8月14日から8月28日までの10営業日、買入対象は香港ハンセン指数を構成する全33銘柄(当時)である。また、その介入規模は約1,180億香港ドルに達し、この額は香港証券取引所の当時の時価総額の5.9%に相当した。香港では、投機的攻撃への対応策として、翌9月に為替制度及び空売り規制の強化策も打ち出された。
◆香港における株式市場介入に対しては、国内外の市場参加者や海外の金融当局から、安易に株価を押し上げようとして市場メカニズムを歪める行為といった懸念の声が相次いだ。ただし、香港側は、株式市場介入は単なる株価押し上げ策ではなく、アジア通貨危機を背景とする投機筋の相場操縦的な攻撃や、いわゆる「市場の失敗」に対応するためのものであるといった趣旨の主張を展開した。
◆香港金融管理局は、そもそも日本銀行のように金融政策運営を実施する機関でないため、その株式市場介入の目的を非伝統的な金融政策手段という文脈で捉えるべきではない。他方、株式市場介入に関して、香港政府と香港金融管理局などの公的部門が情報開示を通じた透明性の確保や積極的な対外説明を通じて説明責任を果たすべく努めていたという点は、政府や金融当局の姿勢として評価できる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
株主還元に比率目標を掲げる主要企業が6割を超える
DOEは機械や化学で、累進配当は卸売業や銀行業での採用率が高い
2025年09月11日
-
特別配当・記念配当の動向と株価への影響
毎年1割程度が特別・記念配当を実施、株価押し上げ効果は短期的
2025年09月09日
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日