香港の1998年8月の株式市場介入の舞台裏

日銀の現状との相違点とは?

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サマリー

◆香港金融管理局は、1998年8月、市場参加者にとって想定外となる株式市場介入を実施した。この事例については、日本銀行のETF買入政策を巡る議論で言及されることもある。香港における株式市場介入は、ヘッジファンド等の投機筋が香港の為替市場と株式市場において大規模な投機的攻撃を仕掛けたことが背景にある。

◆株式市場介入の実施期間は1998年8月14日から8月28日までの10営業日、買入対象は香港ハンセン指数を構成する全33銘柄(当時)である。また、その介入規模は約1,180億香港ドルに達し、この額は香港証券取引所の当時の時価総額の5.9%に相当した。香港では、投機的攻撃への対応策として、翌9月に為替制度及び空売り規制の強化策も打ち出された。

◆香港における株式市場介入に対しては、国内外の市場参加者や海外の金融当局から、安易に株価を押し上げようとして市場メカニズムを歪める行為といった懸念の声が相次いだ。ただし、香港側は、株式市場介入は単なる株価押し上げ策ではなく、アジア通貨危機を背景とする投機筋の相場操縦的な攻撃や、いわゆる「市場の失敗」に対応するためのものであるといった趣旨の主張を展開した。

◆香港金融管理局は、そもそも日本銀行のように金融政策運営を実施する機関でないため、その株式市場介入の目的を非伝統的な金融政策手段という文脈で捉えるべきではない。他方、株式市場介入に関して、香港政府と香港金融管理局などの公的部門が情報開示を通じた透明性の確保や積極的な対外説明を通じて説明責任を果たすべく努めていたという点は、政府や金融当局の姿勢として評価できる。

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