四半期金融レポート 2021年4月号

①SDGs債発行企業の特徴とは?②Fedの危機対応は終了へ③コロナ禍の新興国向け国際与信

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  • 政策調査部 研究員 中村 文香
  • 坂口 純也
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼
  • 遠山 卓人

サマリー

◆四半期金融レポートは、国内外の資金循環や金融面での変化を四半期ごとに点検することを目的としている。今回のレポートにおいては、以下の4つのテーマを取り上げる。

◆【企業金融:SDGs債発行企業の特徴とは?】SDGs債を発行した企業を業種別に見ると、運輸・物流、建設・資材、金融(除く銀行)で多く、情報通信・サービスその他や素材・化学、小売、商社・卸売で少ないなど、発行体の分布には偏りが見られる。利活用のしやすさには業種差があるようだ。企業別に有利子負債に占めるSDGs債の割合を見ると、大部分の企業で0-3%程度と財務面でのSDGs債の位置付けは低い。

◆【金融政策:Fedの危機対応は終了へ】Fedの危機対応ファシリティは導入から1年が経ち、ほとんどが終了している。ファシリティは市場が正常であれば使うインセンティブがないものが多いため、市場の回復とともに自然に必要性が低くなった。Fedは金融システム安定のための手段であるLLRのファシリティを手じまいし、物価の安定と雇用の最大化という通常の政策に復している。

◆【国際金融:コロナ禍の新興国向け国際与信、これまでとこれから】コロナ禍での新興国向けの国際与信残高の減少は限定的となった。その要因としては、世界金融危機時とは異なり先進国の銀行で財務の健全化が進められ、また2020年3月以降にドルの流動性供給策が行われたことが挙げられる。新興国向け国際与信の先行きを考える上では、新興国と先進国間の成長率格差や米国金利上昇の動向に注視する必要がある。

◆【BOX: 独禁法特例法等による地域金融市場の寡占化は貸出金利にどのような影響をもたらすか?】地域金融市場の寡占化は金融サービスの質に影響を与えると考えられているが、独禁法特例法による合併の実施後に貸出金利が短期間で大幅に引き上げられることは考えにくい。また、仮に貸出金利の引き上げがなされる場合、政府によるモニタリング等の措置の厳しさにより引き上げの水準が左右されると思われる。

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