2019年07月23日
サマリー
本稿では、地域銀行(地銀)の中期経営計画(中計)から地銀が抱える本質的な経営課題の分析を試みた。本質的な経営課題とは、投資家や監督当局が注目する評価項目に中計が十分に応えられていない点である。効率性の向上や役務収益の拡大などが今後の地銀経営の焦点であるが、これらを計数目標として設定している銀行は課題解決の緊急性に鑑みると多くない。
中計の計数目標を分類し、特定の計数の有無によって経営指標に差があるかを分析すると、効率性計数の設定行は非設定行に比べて良好な効率性を示しているが、預り資産関連計数に関しては有意な差は見られなかった。効率性は経営がコントロールできるが、預り資産ビジネスは、その成果が外部環境に依存する部分が大きいことによると考えられる。
稼ぐ力の持続可能性を求められる地銀にとって、今後の中計に求められるのは、戦略と計数目標のつながりをより強く意識した中長期の計画を描くことと、それを可能ならしめる組織と人材をより変革することだろう。ただし、個別行で限界があるならば、既に実施されている複数行の連携に活路を見いだし、業界全体の変化に結び付けていくことが必要ではないか。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日