金融政策正常化の中で不安定化する国際金融システム

『大和総研調査季報』 2019 年新春号(Vol.33)掲載

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サマリー

欧米において金融政策の正常化が進んでいる。しかし、2018 年以降の世界経済は下押しリスクが高まっており、米中貿易摩擦やBrexit に向かうプロセスなど不確実性も高い。今後、市場参加者が想定していないペースで金融政策の正常化が進んだ場合、国際金融システムの不安定化をもたらす可能性があることが、2019 年の注目点である。

国際金融システムの不安定化が発生した場合、ドル需要が高まり、ドルの流動性が低下するケースが多い。米国は先駆けて金融政策の正常化を進めており、ドル調達コストは既に上昇している。米国の国債発行増や新興国のドル需要・供給における変化、グローバルな金融規制などによってオフショアダラーの流動性が低下しつつある。こうしたドル調達環境は2019 年以降もタイト化することはあっても緩和することは考えにくい。

ドル調達環境が意図せぬ形で急激にタイト化した場合、波及先として懸念されるのは、(1)信用力の低い企業向けのレバレッジドローン、(2)脆弱な新興国、(3)国際与信の出し手である邦銀—が挙げられる。過度に悲観的になるべきではないが、備えが重要だろう。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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