2015年05月01日
サマリー
◆2014年11月に行われた日中財務相会談を機に、我が国政府により東京における人民元ビジネスの拡大に向けた道筋が模索されている。報道によれば、具体的な施策として東京でのオフショア人民元建て債券の発行が検討されている。本レポートでは、香港・ロンドン・シンガポールのオフショア人民元建て債券市場の現状を比較し、東京におけるオフショア人民元建て債券市場の創設・育成に向けた課題を検討する。
◆先行するロンドン、シンガポールにおけるオフショア人民元建て債券の発行状況をみると、国内企業による発行が少なく、中国系企業による発行が多くを占めている。国内企業による発行が進まない背景としては、香港と比較して①人民元の流動性が劣る、②獲得した人民元を中国本土に還流させるルートが少ないことが指摘される。東京においてオフショア人民元建て債券市場を創設するに当たっては、人民元建て貿易決済の促進等を通じた人民元の流動性の向上を図る必要があるほか、中国本土向け人民元建て融資等の人民元の還流ルートの拡充を行うことも必要であろう。加えて、市場の拡大を図るには主要な発行体である中国系企業による発行を促す必要があるといえる。
◆今後人民元の規制が緩和されていった場合、資金移動の自由化による中国本土とオフショア市場間の金利差の解消や、パンダ債の発行増加等が想定される。その結果、オフショア人民元建て債券の発行増加にブレーキがかかる可能性もある。東京におけるオフショア人民元建て債券市場を長期的に育成するためには、人民元の自由化が行われるまでに市場を一定規模に成長させることが必要といえる。
◆東京におけるオフショア人民元建て債券市場の創設には課題があるものの、我が国の対中貿易の規模に鑑みれば、東京にはオフショア人民元市場としての潜在性がある。東京におけるオフショア人民元建て債券市場の創設は東京の国際金融センターとしての地位向上のための有効な手立ての一つとなるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
-
CGコードの見直しで会社の現預金保有に焦点
現預金の必要以上の積み増しについて検証・説明責任の明確化を検討
2025年06月24日
-
グロース市場改革を企業はどう捉えているか
投資家ニーズを汲み上げ、株価を意識的にデザインする必要性
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日