リスクマネー供給構造の現状と課題

~国際比較でみた直接・間接の供給パイプ~『大和総研調査季報』 2014年春季号(Vol.14)掲載

RSS
  • 調査本部 常務執行役員 調査本部 副本部長 保志 泰
  • 政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

サマリー

日本において「リスクマネーの円滑な供給」が必要であると言われて久しいが、そもそも「リスクマネー」という言葉は曖昧に使われている。そこで、リスクマネーとは何か、そしてどうあるべきかについて国際比較を踏まえて検討する。本稿では、リスクマネーを狭義で捉え、企業の「株式・出資金」へ投じられる資金を中心に考察する。


家計を源泉とするリスクマネー供給の構造を先進国で比較すると、それぞれ異なってはいるが、日本のパイプが際立って細いことが明らかとなる。特に家計から年金や投資信託などを通じて間接的に供給されるパイプが細く、同様な国においては起業活動率が不活発な傾向が見られる。一方、アジア新興国の家計金融資産は相対的にリスク回避的ではあるものの、それと比較しても日本のリスク回避傾向の強さが感じられる。


日本の家計金融資産における直接・間接のリスクマネー供給の割合は、現状15%に満たないが、起業活動の活発な国を見る限り、最低でも約2倍の30%程度はあることが望ましい。そして、特に年金や投資信託などを通じた間接的なパイプを太くすることが重要な課題と言えそうだ。


大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

大和総研調査季報(最新号はこちら)

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。