リスクマネー供給構造の現状と課題
~国際比較でみた直接・間接の供給パイプ~『大和総研調査季報』 2014年春季号(Vol.14)掲載
2014年06月02日
サマリー
日本において「リスクマネーの円滑な供給」が必要であると言われて久しいが、そもそも「リスクマネー」という言葉は曖昧に使われている。そこで、リスクマネーとは何か、そしてどうあるべきかについて国際比較を踏まえて検討する。本稿では、リスクマネーを狭義で捉え、企業の「株式・出資金」へ投じられる資金を中心に考察する。
家計を源泉とするリスクマネー供給の構造を先進国で比較すると、それぞれ異なってはいるが、日本のパイプが際立って細いことが明らかとなる。特に家計から年金や投資信託などを通じて間接的に供給されるパイプが細く、同様な国においては起業活動率が不活発な傾向が見られる。一方、アジア新興国の家計金融資産は相対的にリスク回避的ではあるものの、それと比較しても日本のリスク回避傾向の強さが感じられる。
日本の家計金融資産における直接・間接のリスクマネー供給の割合は、現状15%に満たないが、起業活動の活発な国を見る限り、最低でも約2倍の30%程度はあることが望ましい。そして、特に年金や投資信託などを通じた間接的なパイプを太くすることが重要な課題と言えそうだ。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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