2012年10月30日
サマリー
◆中国の対日証券投資残高は2010年以降増加してきた。特に、短期債に対する投資が大きい。また、中長期債に対する投資残高は、リーマン・ショックや欧州債務危機の影響を受ける間も継続的に増加した。株式についても、2010年以降における株価下落の中でも保有残高を増やしてきた。
◆中国の対日証券投資のメイン・プレイヤーは、外貨準備の運用主体であるSAFE、CICであると考えられる。中国の外貨準備運用は主に米ドル建て資産を対象としてきた。2010年以降は、これに加え、円建て資産への投資を増やし、運用対象となる資産を多様化してきた。これは、中国が米国債の格下げ等を契機に対米投資偏重を修正したことや、外貨準備の長期運用・多様化を推進したことが背景として挙げられる。
◆中国の対日証券投資の増加が日本の資本市場に与えるインプリケーションとしては、中国が外貨準備の運用を通して、日本株式、債券の新たな受け皿(投資主体)となりうることが挙げられる。また、SAFEやCICが日本株式、債券の長期安定的な保有主体となる可能性もあろう。
◆一方で、外貨準備高の増加幅や、外貨準備の通貨構成に占める日本円(円建て資産も含む)の保有割合からみると、中国の対日証券投資が今後も大幅に増加するとは考えにくいと言える。また、尖閣諸島問題といった地政学的リスクが中国の対日証券投資に与える影響も看過できないであろう。
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