2011年11月14日
サマリー
◆日本国債、とりわけ短期国債(国庫短期証券)において海外主体の保有が増えている。国債以外の他の債券等は横ばい推移で、株式は漸増している。地域別では、欧米中心ではあるが、アジアの存在感が台頭してきている。対内直接投資も似た傾向にある。
◆グローバルに金融問題が取り沙汰されている時は、本邦短期債へのニーズが高まるが、危機的状況に至るときは、本邦金融資産も売却している可能性があろう。
◆円資産へのニーズを考えるにあたり、世界における日本円の存在感は、外為取引に占める円の取引量、外貨準備としての円、国際債発行に占める円建て比率をみても、ドルやユーロの前では「その他通貨」と言わざるを得ない。
◆中国の外貨準備の主な投資先は米ドル建ての資産とみられる。中国の米国債等の保有増減動向からは、中国は米ドル建て資産も米国債だけではなく、あるいは米ドル建て資産以外へ、外貨準備の分散を志向していると考えられる。
◆欧州債務問題のもとで、各国当局は米国債券の保有を減らした。海外主体による日本の短期国債保有増は、財政赤字のみならず対外純資産等が意識された可能性がある。(1)流動性(売買可能性)、(2)価値保存機能、(3)財政状況好転への期待等からは、日本円という選択肢が浮上する。
◆海外主体による日本国債保有の増加が続く場合のインプリケーションとして、(1)海外貯蓄の利用、(2)国債管理政策にプラスとマイナスの影響、(3)円を利用した取引の拡大、の3点が挙げられる。
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