2023年07月20日
サマリー
企業価値を測定する一つの指標であるPBR(株価純資産倍率=時価総額÷簿価)は、東京証券取引所のガイドラインの開示から俄然注目が高くなっている。PBRとROE(自己資本利益率)において、米国の銀行・地方銀行・証券は企業価値が相対的に高い。その主な理由として、米国の将来的な人口増加を背景とした市場としての潜在成長性、産業・企業の活発な新陳代謝、それを支える経済・金融エコシステムが挙げられる。加えて、州によってその経済・産業特性が大きく異なるという多様性が挙げられよう。一方、米国の上場金融機関の取り組みとしては、特にリーマン・ショック後の金融危機以降、リスクをコントロールする仕組みを構築しつつ、株主が求める収益性を最大化していくという企業価値経営を着実に強化して実行に移してきた。具体的には部門別ROEが高い部門に重点的に使用資本の割り当てを決めて、それを投資家に説明し、収益成長のトラックレコードを積み重ねて、投資家の信用を得てきた。一部の日本の金融機関の直近の決算説明会でもこのような取り組みが見られるようになってきており、企業価値経営がこれから本格化することが期待される。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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