2019年09月11日
サマリー
◆今年の10月に予定されている消費税率の引き上げが、いよいよ目の前に迫ってきた。政府は、今回の消費税率引き上げにあわせてキャッシュレス決済の「ポイント還元制度」を新たに導入する。この制度が打ち出された背景には、「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」の二兎を追うという政治的思惑が透けて見える。
◆各種アンケート調査に基づくと、ポイント還元制度は、消費者にキャッシュレス決済を促すとともに、店舗がキャッシュレス決済システムと決済端末を導入する1つのきっかけになると期待され、これらの点において制度導入の意義があると評価できる。
◆今後想定すべき課題として、4点が挙げられる。具体的には、(1)現在の予算額だけでは効果は不十分、(2)9ヵ月間の時限的な制度、(3)今後3つの段階で混乱や困惑が発生、(4)税の公平性と顧客の流出リスク、である。
◆今回のポイント還元制度は新たな試みとして非常に興味深い政策であるものの、これだけでは、「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」の二兎を追うことは困難だと考える。今後の焦点は、ポイント還元制度がキャッシュレス化を促進させる、いわば「呼び水効果」をどの程度もたらすのかという点だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2019年の消費増税の影響度と今後の課題
前回のような「想定外」の下振れは避けられるのか?
2018年06月22日
-
キャッシュレス新時代の扉を開くための6つの鍵
「トリプル・ウィン」の精神で全体最適の実現へ
2019年05月22日
-
「消費増税対策でキャッシュレス化推進」に潜む盲点
2019年08月20日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日