キャッシュレス決済の「ポイント還元制度」の意義と課題

「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」の二兎を追えるか?

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サマリー

◆今年の10月に予定されている消費税率の引き上げが、いよいよ目の前に迫ってきた。政府は、今回の消費税率引き上げにあわせてキャッシュレス決済の「ポイント還元制度」を新たに導入する。この制度が打ち出された背景には、「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」の二兎を追うという政治的思惑が透けて見える。

◆各種アンケート調査に基づくと、ポイント還元制度は、消費者にキャッシュレス決済を促すとともに、店舗がキャッシュレス決済システムと決済端末を導入する1つのきっかけになると期待され、これらの点において制度導入の意義があると評価できる。

◆今後想定すべき課題として、4点が挙げられる。具体的には、(1)現在の予算額だけでは効果は不十分、(2)9ヵ月間の時限的な制度、(3)今後3つの段階で混乱や困惑が発生、(4)税の公平性と顧客の流出リスク、である。

◆今回のポイント還元制度は新たな試みとして非常に興味深い政策であるものの、これだけでは、「消費増税の影響緩和」と「キャッシュレス化推進」の二兎を追うことは困難だと考える。今後の焦点は、ポイント還元制度がキャッシュレス化を促進させる、いわば「呼び水効果」をどの程度もたらすのかという点だ。

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