不動産業、個人向け貸出増加もリスク孕む

企業向けの貸出増の背景には前向きな設備投資意欲

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サマリー

◆2016年度の国内銀行の貸出は、不動産業を中心とした非製造業向けの貸出、個人向けの貸出の伸びの高まりが目立った。


◆貸出増加の3割を不動産業向け貸出が占めた。不動産業は日銀短観の業況判断DIが高水準であり、生産・営業用設備判断DIが不足超過に偏っており、資金需要が増加している。また、個人向け貸出のうち、消費者ローン、住宅ローン等向け共に伸びが高い。


◆非製造業向け貸出の中でもリース業(物品賃貸業)向け貸出の伸びも高く、中小企業を中心とした設備投資意欲の改善と整合的である。また、貸金業向けの貸出の高い伸びは、個人向けカードローンの増加を反映しているとみられる。


◆2016年度の国内銀行の預金は、定期性預金が減少し、要求払い預金が増加するなど、預金のシフトが生じた。また、都市銀行において金融機関預金が増えており、マイナス金利の回避を目的に、地域金融機関などの余資が一部、都市銀行に預けられたとみられる。


◆不動産向けの貸出増加を背景に、不良債権化を懸念した日銀・金融庁が実態調査を始めた。経済成長に貢献できる貸出の増加が望まれるものの、銀行の余資が金融機関預金として積み上がっている面を考えると、リスクを抱えていても資金需要のある先へ貸出が流れる可能性が今後もあるだろう。

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