環境マネジメントシステム(EMS:Environment Management System)とは、事業者・自治体・学校などの組織が、組織全体で継続的に省エネルギー・省資源・廃棄物削減といった環境に配慮した事業活動を行うための仕組みのことである。EMSを効果的・効率的に進め、取り組み状況を外部からも見えるようにする方法として、複数の規格が公開されている。国際標準化機構(ISO)が定めた「ISO 14001」の他に、EUの“EMAS(Eco-Management and Audit Scheme)”、日本の「エコアクション21」「KES・環境マネジメントシステム・スタンダード」などである(図表1)。規格で求めているのは「トップのコミットメント」「方針と計画」「記録」「評価」「見直し」などであり、組織全体でマネジメントしていく上で必要なポイントは共通である。

(注2)一般財団法人 持続性推進機構(IPSuS) 「認証・登録の状況」
(注3)特定非営利活動法人・KES環境機構 「登録事業者を探す」を基に、学校版の登録数を除いて大和総研計算(2013年7月17日実施)
(出所)以下の資料、および各種公開資料を基に大和総研作成
公益財団法人 日本適合性認定協会、一般財団法人 持続性推進機構(IPSuS) エコアクション21 中央事務局、特定非営利活動法人 KES環境機構
ISO 14001登録数は長らく日本が世界一であったが、近年、登録数の伸びが鈍化し、登録数を急伸させている中国に2007年からはその座を譲っている(図表2)。日本の伸びが鈍化したのは、事業所別の登録から事業者としての登録への変更、景気後退による登録返上や他のEMSへの乗り換えが背景にあると言われている。一方、取引先選定ポイントの一つとして何らかのEMSの登録やEMSに準拠した体制の構築を挙げている企業・自治体も出てきている(※1)。EMS導入により、環境負荷軽減や光熱費などのコスト削減のみならず、「業務の仕組みが明確になり目的達成のための業務改善が進む」や「優れた組織として社会の評価を得る」といった組織内部に対する効果が得られたとする組織も少なくない(※2)。事業者には、EMSをコストではなく投資と捉えて活用することが望まれる。

(※1)環境省の「グリーン購入取り組み事例データベース」に、各自治体のグリーン購入調達方針や実施状況が紹介されている
(※2)公益財団法人 日本適合性認定協会 「調査報告書 ISO 9001・ISO 14001 に対する適合組織の取組み状況」(2010年2月)の中から、「ISO 9001・ISO 14001 運用状況について」の設問に対する回答
(2009年12月28日掲載)
(2013年7月19日更新)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連キーワード
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日