2012年12月21日
サマリー
2012年12月12日、国際的な標準化機関であるISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)のマネジメントシステム規格に関する調査“The ISO Survey of Management System Standard Certifications - 2011”が発表された(図表)。
調査対象は7つのマネジメントシステム規格で、全体の認証数は1%の微増となっている。これは、圧倒的に認証数の多いISO 9001が1%とはいえ減少したため、その他の規格が6%や12%の増加でも、全体の増加率を引き下げることとなったためである。認証された総数を国別にみると、規格発行当初は欧州・北米や日本などの先進国が多かった。しかし、最近はアジア、東欧、南米などの新興国の増加が目立っており、その結果、総数でもトップ10に入るようになってきている。中でも中国は、総数でも増加数でも7つのうち6つの規格でトップ10に入っている。
中国と同様、6つの規格の総数でトップ10に入っている日本だが、代表的なマネジメントシステム規格であるISO 9001(前年比-3.3%)やISO 14001(前年比-1.3%)の認証数は減少しており、その他の規格も含め、増加数では勢いがあるとはいえない。背景には、認証対象の統合(部門や拠点単位で認証していたところを、会社全体の認証に変更)もあるが、認証の更新にかかる費用の負担感や、認証されたことによる経営的なメリットが見えにくいことがあるといわれる。
認証のような外部から評価を受ける仕組みは、ともすると形式主義に陥って、認証を受けて終わりとなりがちな面もある。しかし本来、コストも人手もかけて認証を取得する目的は、品質向上や環境負荷低減などの活動と経営をリンクするためである。国際的な規格で認証をとるということが、グローバルなビジネス展開をする上で企業や製品の信頼性を担保し、差別化戦略に資することも求められている。このため経済産業省では2012年12月、日本工業標準調査会標準部会・適合性評価部会 管理システム規格専門委員会の下に「事業競争力ワーキンググループ」を設けた。マネジメントシステムを活用した組織の活動によって、組織力や経営力を改善・強化していくための方策を検討するとしている。

(出所)ISO “The ISO Survey of Management System Standard Certifications - 2011”を基に大和総研作成
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ESGスコアの成長率と企業パフォーマンス
「社会」に関する取組みの中長期的な継続と向上の重要性
2025年06月26日
-
投資家の自然資本/生物多様性に関する評価軸
Nature Action 100、Springが示す枠組み
2025年06月20日
-
スチュワードシップとESGは別モノ:英FRC
英国でスチュワードシップの定義を変更、ESG要素を削除
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日