責任投資原則(PRI)とは、正式名称を「United Nations Principles for Responsible Investment(UNPRI=国連責任投資原則)」といい、解決すべき課題をEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの分野(総称してESGと呼ぶ)に整理し、ESGに配慮した責任投資を行うことを宣言したものである。


策定は、2005年に当時の国連事務総長であったコフィ・アナン氏が、世界12カ国から20の大手機関投資家を招聘したことに始まる。この機関投資家グループと、それをサポートする投資コミュニティー、国際機関、政府機関、学者などの専門家の協力のもと、国連環境計画(United Nations Environment Programme =UNEP)の金融イニシアチブ(UNEP Financial Initiative=UNEP FI)および、国連グローバル・コンパクト(UN Global Compact)が事務局となって作成され、2006年4月27日にニューヨーク証券取引所において発足式が行われた。


冒頭の包括的ステートメントと6つの宣言から構成され、包括的ステートメントにおいて、資産運用を委託した者(委託者=アセット・オーナー)の利益を最大限に考慮すべきという機関投資家の伝統的な「受託者責任」を明記した上で、ESG要因が投資パフォーマンスに影響する可能性があるというPRIの大前提を示している。また、Q&A集でPRIと受託者責任との関係について、「投資判断においてESGの課題を適切に考慮することは、リスクを調整したより高い収益に繋がり、投資家の受託者責任を堅固に守ることとなります。」と述べている(※1)。ESG要因が投資パフォーマンスに影響する以上、当該要素について考慮することも受託者責任に含まれることを示していると考えられる。


また、6つの宣言には、意思決定のプロセスにESGの視点を組み入れるという機関投資家としての態度表明にとどまらず、投融資先企業に対するESG情報の開示要請(株主行動への関与表明)のほか、機関投資家自身による情報公開を含め、PRIを普及させるための項目が示されている。


責任投資原則(PRI)の狙いは、署名機関によるESG投資の実績を積み重ねることで、ベスト・プラクティスやリサーチ資源の共有等を図り、ESG課題に取り組む上での有効なフレームワークを構築し、ひいてはESG投資の有効性を実証することで、その普及拡大を図ることにある。また、署名機関がESGの観点を組み込んだ投資方針・投資手順を策定・実践するにあたっては、ESG投資の研修プログラムや、署名機関間の情報共有の推進といった様々なサポート・メニューが事務局から提供されている。


(※1)An investor initiative in partnership with UNEP Finance Initiative and the UN Global Compact、「責任投資原則」


(2011年6月20日掲載)

(2012年7月31日更新)

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