2025年10月15日
サマリー
◆カーボンクレジットの信頼性向上に、MRV(測定・報告・検証)のデジタル化(dMRV)が大きな変革をもたらしている。dMRVは、衛星リモートセンシングやIoT、AI解析などで効率的にデータ収集と処理を自動化し、従来型MRVのプロセスが抱える非効率性や不透明性といった課題を解決しつつある。
◆dMRVを活用した格付の付与や市場インフラの整備が進めば、企業や投資家がアクセスできるデータの質と量の向上が期待される。これにより、企業はカーボンクレジットの調達・投資判断の効率化・迅速化や、グリーンウォッシング回避に繋げることができる。
◆dMRVは炭素価値(排出削減効果)の定量評価を前進させた一方、地域社会への影響といった非炭素価値の評価は依然として定性的手法に依存する。この評価手法の差は総合的な品質判断を難しくし、カーボンクレジットの価値を見誤るリスクを生んでいる。
◆企業や投資家には、dMRV等の定量データの検証と定性的な精査を主体的に組み合わせた多面的な評価が求められる。その精緻な品質評価を基に、自社方針と整合した最適なポートフォリオを構築・開示することは、説明責任の遂行と競争力向上のカギとなる。
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