人的資本開示に求められる2つの視点

世界で共有されている課題への対応と企業独自の取り組み

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2022年02月25日

サマリー

◆人的資本はESG投資家の投資評価項目の1つであり、海外では人的資本に関する情報開示のルール化が進む。日本においても企業の人的資本の開示の在り方が検討されている。

◆人的資本を企業価値の向上に結び付けるため具体的に考慮すべき事項は、コンプライアンスの遵守や労務管理、ダイバーシティの確保やワークライフバランス、従業員の育成・スキル向上など多岐にわたる。一方、どのような取り組みが企業価値向上に結び付くかは、企業が事業展開する地域や、企業の事業内容によって異なる。重要なのは、中長期的な戦略の実現に十分な人的資本が備わっているのか、不足がある場合どのように対応するのかを示すことであろう。

◆世界的に目標や達成手段が共有されている気候変動に関する情報開示と異なり、人的資本の情報開示は企業ごとの個別要素が強い。ジェンダー平等の実現や強制労働の根絶、労働者の人権保護など、世界全体で共有されている課題に関しては共通の開示指針・フレームワークを策定することが考えられるが、人事政策、人材育成など単純な横比較が難しい項目に関しては、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言で示されている4要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を参考にしつつ、企業が重要だと考える情報を自社で判断し、開示することが望ましいのではないか。

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