2020年12月25日
サマリー
◆近年、パリ協定で合意された2℃目標を達成するため、GHG(温室効果ガス)排出量の長期ネットゼロ目標を表明する国・地域が相次いでいる。こうした中、ネットゼロ目標の達成に向けて、金融機関(ここでは、銀行、保険会社、アセットマネージャー、アセットオーナーを指すこととする)が果たす役割への関心が高まっている。金融機関が直接排出するGHGは相対的に小さいものの、投融資を通じて、間接的な形でGHGを排出しており、資金提供者の立場からエンゲージメントなどを通じて、投融資先企業に対し、GHG排出量の削減を促すことが期待されている。
◆投融資ポートフォリオのGHG排出量を測定し、これを管理するためには、まずは投融資先企業や事業のGHG排出量を捕捉する必要がある。しかし、現状、GHG排出量を公表している上場企業の数は限られている。このため、既に一部の金融機関が公表している投融資ポートフォリオのGHG排出量や、これを前提としたシナリオ分析、GHG排出量削減に係る目標設定に対する透明性、比較可能性が担保されていないという課題が指摘されている。
◆こうした中、PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)という団体が投融資に関連するGHG排出量の評価・レポーティングに係る統一された基準を策定した。また、SBTi(Science-Based Target initiative)は金融セクター向けにSBTの設定・認証に関するガイダンスを公表した。こうした共通の基準やガイダンスの活用が広がっていくことで、金融機関が公表する投融資ポートフォリオのGHG排出量やシナリオ分析、目標設定に対する信頼性が向上すると期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
TCFD提言の活用はどれほど進んだか
気候関連財務情報開示の現状と今後の課題
2020年11月10日
-
株式市場のパラダイム・シフト
ステークホルダー資本主義やインパクト投資の広がり
2020年12月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日