2015年10月21日
サマリー
◆COP21の合意に向けて日本が提出した約束草案の削減目標は、米国やEUに遜色ない水準であり、COP21において他国と対等な立場で交渉に臨む準備ができたことになる。ただし、既にGHG排出量が減少傾向にある米国とEUに対して日本はこれからピークアウトに取り組まなければならず、目標達成に向けて大きな努力が求められる。
◆日本をはじめ、三者の削減は主にエネルギー需給構造の改善を通して行われることになるが、前提条件となるエネルギー供給サイドの事情は三者で大きく異なる。エネルギー自給率が低い日本は根本的な脆弱性を抱えており、厳しい制約条件の下で構造改善を図っていかなければならない。
◆米国はシェールガスの本格生産によって電源構成の改善が進んでいる。オバマ政権は発電セクターに対する排出規制によって石炭から天然ガスへのシフトを促進する政策の実施に取り組んでいる。また、次に削減ポテンシャルの大きい運輸セクターへの燃費基準の強化も進めている。
◆EUはエネルギー自給率が50%程度ではあるが、地域統合によるエネルギーポートフォリオの最適化が可能であり、エネルギー供給構造の改善計画に一定の根拠が認められる。さらに、統合効果を強化するエネルギー同盟(エネルギー供給網の整備や単一市場の構築等)を目指す具体的な動きもみられる。
◆日本は、需要(最終消費)サイドについては自主的な取組みに任せず、政策主導で一定程度の削減量を担保することを目指すことが望まれる。既に導入済みの炭素税の一層の活用や、EUが試行錯誤を続けているETS等の早期導入に向けた議論を真剣に行う必要があると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
パリ協定を踏まえた国内の環境・エネルギー政策の現状と方向性
省エネ・低炭素対策は経済状況に応じた柔軟な政策対応とイノベーションの創出が必要
2016年02月15日
-
COP21に向けた地球温暖化対策(その7)
「パリ協定」採択で、2030年度に向けた対策が本格化
2015年12月28日
-
COP21に向けた地球温暖化対策(その6)
COP21が、いよいよ開幕へ。交渉の見どころを探る。
2015年11月27日
-
COP21に向けた地球温暖化対策(その5)
地球温暖化の悪影響を回避する“適応計画”をめぐる課題
2015年11月17日
同じカテゴリの最新レポート
-
GX-ETS本格稼働で強まるJ-クレジットの早期確保への動き
市場に依存しない、上流(創出)関与と相対・長期での確保が鍵
2026年02月05日
-
人的資本可視化指針改訂で期待される経営戦略と人材戦略の深化
期待される開示の負担軽減と比較可能性の向上
2026年01月23日
-
バイオマス発電の質による選別と高付加価値化への潮流
BECCS・国内資源活用という新たな方向性
2026年01月21日
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

