EUの気候変動対策

COP21に向け、提出された約束草案と日本への示唆

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2015年03月31日

  • 物江 陽子

サマリー

◆本年末のCOP21に向けて、各国は2020年以降の気候変動対策案(約束草案)の提出が求められている。EUは3月6日に約束草案を提出し、米国や中国も早期に提出するとしている。日本でも早期提出に向けての議論が進められている。


◆約束草案の提出で先行したEUでは、温室効果ガス排出量が2012年に1990年比▲19%となり、2020年目標(▲20%)は超過達成が見込まれている。経済成長の減速、産業構造のサービス化とともに気候変動対策が寄与したとみられ、再生可能エネルギーなど低炭素エネルギー技術の導入が拡大している。


◆EUの約束草案は、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比40%削減する目標を柱としている。科学的知見と国際合意に基づく数字であり、データと分析に裏付けられてもいる。2030年目標は、2050年目標(▲80%)達成のための費用効率的な排出削減経路の調査に基づき設定されている。


◆EUは債務危機の発生にもかかわらず、試行錯誤しながらも気候変動対策を着実に進めてきたと言えよう。気候変動対策は、低炭素経済へのイノベーションの源泉とも位置付けられており、EU中期予算では総額の2割を気候変動対策に充てることが合意されている。


◆EUと比較すれば、日本では温室効果ガス排出量の排出削減が進んでおらず、政策ビジョンの策定も遅れている。バックキャスティングの思考や、シナリオ分析、費用便益分析の手法などには、EUから学べる点もあろう。対策の遅れに伴うコスト増のリスクに留意し、低炭素経済へのイノベーションのための知恵と工夫が求められよう。

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