2014年09月18日
サマリー
◆オバマ政権は昨年6月、CO₂排出削減の観点から、途上国における石炭火力発電所建設への公的金融支援を原則として停止し、他国や国際開発金融機関にも同様の方針を採択するよう働きかける計画を発表した。
◆以降、世銀グループや欧州投資銀行などの複数の国際開発金融機関、また英国やオランダなど欧州の数カ国が、米国に同調する姿勢を見せている。
◆世界のCO₂収支は、人間活動による排出量が自然の吸収量を超える「赤字」の状態が続いており、大気中の温室効果ガス濃度は2011年にCO₂換算で416ppmに達した。国際社会が目指す450ppmでの安定化のためには、確かに石炭火力の行方は鍵となろう。
◆世界の発電部門における脱石炭は進むのだろうか。人口および電力需要の低成長が見込まれる先進国はゆるやかに脱石炭に向かう見通しだ。一方、人口・電力需要ともに高成長が見込まれ、豊富な石炭資源を持つ新興国では、脱石炭はかなりハードルが高いのが現状だ。米欧が石炭火力への公的金融支援を停止したとしても、BRICS新開発銀行やアジアインフラ投資銀行が新たな融資元となる可能性もある。温暖化防止の観点からは、石炭火力に代わる低炭素電源の開発普及およびコスト競争力強化がより重要となるだろう。
◆世界のCO₂排出量に占めるOECD諸国と非OECD諸国の比率は1980年に6:4だったが、2011年には4:6と逆転した。米欧が脱石炭に向かうなか、気候変動対策の鍵を握るのはますます新興国となりそうだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
東証が求めるIR体制の整備に必要な視点
財務情報とサステナビリティ情報を統合的に伝える体制の整備を
2025年04月28日
-
サステナビリティ課題への関心の低下で懸念されるシステムレベルリスク
サステナビリティ課題と金融、経済の相互関係
2025年04月21日
-
削減貢献量は低炭素ソリューションの優位性を訴求するための有用な指標となるか
注目されるWBCSDのガイダンスを踏まえて
2025年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日