2013年10月02日
サマリー
2013年9月30日、内閣府が「国立公園に関する世論調査」(※1)を公表した。設問は、「国立公園等に対する関心について」、「国立公園の保全管理に対する意識について」、「国立公園の情報提供に対する意識と要望について」、「国立公園の利用について」、「国立公園の公共施設について」である。
「国立公園の保全管理に対する意識について」の中の、国立公園内で地熱発電や風力発電などの再生可能エネルギー施設をつくることに関する設問(国立公園の保護と再生可能エネルギー開発の関係)は、図表1のような結果になった。一番多いのが「小規模な施設にするなど、自然との調和を図りつつ、再生可能エネルギー施設を整備すべきだ」を選択した67.9%で、次が「自然を守るためには,規模は問わず再生可能エネルギー施設は整備すべきではない」の23.1%となっている。この他、開発に関係するものとして「国立公園の保護と観光開発の関係」も問うているが、「自然との調和を図りつつ、ある程度の観光開発も行うべきだ」が57.3%と一番多く、こちらも自然を守ることを最優先する結果にはなっていない。

「自然との調和を図りつつ」というのは、開発をするからには環境に何らかの負荷をかけることは避けられないが、その負荷の影響を最小限にするという「ミティゲーション・ヒエラルキー」という考え方の一部が含まれると考えられる。ミティゲーション・ヒエラルキーは、開発などによって生じる生物多様性への影響緩和の優先順位のことである(図表2)。本調査で一番多かった回答は、この優先順位の最初の2つ(まず回避→回避できなかった影響を低減・緩和・最小化)にあたろう。しかし、稀少性の高い環境を開発せざるを得ない場合など、後半の2つ(影響からの修復・回復・復元→それでも残ってしまった影響を補償・相殺)の対応も求められるようになる場合が出てくると思われる。なお、再生可能エネルギーの資源(風力、水力、地熱など)は、都市部よりも地方に多く存在する。実際の開発にあたっては、直接、影響を受ける地域には、本調査とは違う意識もあり得ることには注意が必要であろう。

(※1)内閣府 世論調査報告書 平成25年8月調査 「国立公園に関する世論調査」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ISSBがIFRS S2の改正案を公表
温室効果ガス排出量の測定・開示に関する要件を一部緩和
2025年05月16日
-
年金基金のESG投資を実質禁止へ:米労働省
バイデン政権時代に制定されたESG投資促進の規則は廃止へ
2025年05月14日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日