改正環境影響評価法が4月から完全施行、発電所の環境アセスメント迅速化は引き続き検討中

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2013年03月08日

サマリー

改正環境影響評価法が4月から完全施行

環境影響評価制度、いわゆる環境アセスメントが2011年に改正され、一部は施行されていたが、2013年4月から完全施行するとして、環境省では1月から3月にかけて、福岡県、宮城県、広島県、北海道、東京都、大阪府、愛知県の7カ所で説明会を開催した(※1)


大きな改正点は、事業実施前の計画段階において「配慮書」手続きをとること、事業実施後に「報告書」手続きをとること、が追加されたことである(図表1)。
配慮書の目的は、計画段階で配慮事項を検討することによって、より有効な環境保全策が選択される可能性を高めることにある。位置・規模や配置・構造に関して複数案を比較し、既存データなどを活用して調査を行い、簡便な手法で予測することを求めている。また、配慮書を活用することで、方法書などの実施期間の短縮化も期待されている。
報告書の目的は、環境保全措置がとられた結果として生物多様性が保全されたかなどの確認をとるためである。

図表1 環境影響評価法 改正後のフロー
図表1 環境影響評価法 改正後のフロー
(出所)環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク「環境影響評価法の一部を改正する法律の概要」

手続き数は多くなるものの、より有効な環境保全策の検討と効率的な事業実施の両立を目指した改正と考えることができる。自治体や住民からの意見聴取の機会を設けるなど、情報交流を活発化することも求められており、合意形成・社会的受容性といった点の改善につながる可能性もある。


配慮書の段階では詳細・高精度なデータを求めているわけではなく、既存データの活用など簡便な方法で行うとされている。事業者が方法書対応と同等な対応をしたり、自治体や住民が配慮書に対して詳細な対応を求めるような、屋上屋を架す過剰な対応をとることのないよう注意が必要だろう。ただし、簡便な方法で検討するに耐える既存データが整備されているとは言いがたいのが現状である。産官学が連携して情報の蓄積・更新に努めることが求められる。


なお、従来の「方法書」、「準備書」、「評価書」手続きにおける電子縦覧は義務化されており、例えば、大分県の地熱発電所「大岳発電所」(リプレース)や、福島県の浮体式洋上風力発電所(新設)の評価方法書がWeb上で公開されている(※2)

発電所の環境アセスメント迅速化は引き続き検討中

発電所の環境アセスメントの迅速化のうち、火力発電所のリプレースについては、今年度内に結論が出るとされた。環境省では、国の審査期間短縮(最大4カ月程度)と、リプレースガイドライン(※3)活用による調査や予測手法の合理化など(最大1年程度)で、最大1年半程度の短縮が可能であり、自治体の協力や事業者の努力によって、さらに短縮の可能性があるとしている。


風力発電所と地熱発電所の新設については、簡素化に資する情報の収集整備について検討中であり、風力発電所については年度末にいったんまとめるとしている。陸上風力発電所の情報整備モデル地区には、第一弾として10地区が選定されている(※4)。今後は、地熱発電所や洋上風力発電所も視野に入れて、風況や環境条件のほか、地元自治体の意向も重視してモデル地区の選定をしていくとしている。


(※1)環境省 報道発表資料 平成24年12月20日「改正環境影響評価法等の説明会の開催について(お知らせ)
(※2)公開期間は、大岳発電所が2013年2月26日(火)~2013年4月10日(水)、浮体式洋上風力発電所が2013年2月5日(火)~2013年3月4日(月)、となっている。
(※3)平成24年に公表されたが、環境省にて内容の拡充を検討中。
(※4)環境省 報道発表資料 平成24年4月9日「平成24年度風力発電等環境アセスメント基礎情報整備モデル事業(情報整備モデル地区における地域固有環境情報整備事業)の実施について(お知らせ)

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