2012年12月07日
サマリー
東京電力福島第1原子力発電所の事故により、大量の放射性物質が放出されたことを受け、平成23年8月に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(※1)」(以下「特措法」)が制定された。この法律では、「政府は、放射性物質により汚染された廃棄物、土壌等に関する規制の在り方その他の放射性物質に関する法制度の在り方について抜本的な見直しを含め検討を行い、その結果に基づき、法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする」(附則第6条)と定めている。これに伴い、第180回国会で成立した「原子力規制委員会設置法(※2)」の附則に盛り込まれる形で「環境基本法」が改正され、環境法の枠外に置かれてきた放射性物質及びこれによって汚染された物も、環境法の対象に含まれることとなった

平成24年11月19日に開催された中央環境審議会の第18回総会では、「環境基本法の改正を踏まえた放射性物質の適用除外規定に係る環境法令の整備について」が議事として取り上げられ、個別環境法に置かれた放射性物質の適用除外規定の整理の方向性が示された。個別環境法には、放射性物質についての適用除外規定を有するものが多数ある。また、家電リサイクル法や建設リサイクル法など、放射性物質を適用除外とする廃棄物処理法上の「廃棄物」の定義を用いる法律も複数ある。これらについて同審議会では、「適用除外規定の削除を検討することとするもの」と「現時点で適用除外規定の削除の適否を判断することは適当ではなく、他法令との関係など現行法の施行状況を見ながら別途検討するもの」に整理して、対象となる法律の例を示している。

全体としては、環境基本法改正の趣旨を個別環境法に可能な限り反映し、適用除外規定を削除することを基本としている。しかし、特措法では、「政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」(附則第5条)としている。原子力発電所事故に関わる汚染廃棄物の処理や除染などは、特措法に基づいて国や自治体が進めているところでもあり、一部の法律については、特措法の見直しに併せて検討することが適当と判断されたものとみられる。同審議会から環境大臣に対する意見具申(※3)(11月30日)では、今後の検討課題等として、「特措法の施行によって得られた知見等も踏まえつつ、一般環境中の放射性物質の基準又は目安などの設定の考え方などについても、個別の検討を進めるべきであると考えられる」と述べている。
特措法は、原子力発電所事故の発生を受け、「事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国、地方公共団体、原子力事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、国、地方公共団体、関係原子力事業者等が講ずべき措置について定めること等により、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的」としている(第1条)。そのため、特措法施行後も、当該「事故由来」以外の放射性物質の放出等については、いわゆる法の空白状態が続いているといえよう。中央環境審議会によって適用除外規定の整理の方向性が示されたことにより、「適用除外規定の削除を検討することとするもの」とされた法律については、平成25年にも改正が検討されることとなろう。また、その他の適用除外規定を有する法律等についても、特措法の見直し時期にあたる平成26年度を目途に検討が進められ、法の空白を埋める取り組みが進むことが期待される。
状態や状況に関わらず人体や環境に無害な物質は少ないため、多くの物質について取扱い等に関するルールを設け、ルールの範囲内で一定のリスクを許容せざるを得ないのが現実であろう。しかし、放射性物質については、特段の不安を抱いている国民が少なくないことも事実であろう。放射性物質に係るルールを定めるにあたって、科学的知見に基づく安全の判断は当然重要であるが、国民が安心してそのルールを受け入れるためには、一方向の情報提供だけでなく、双方向のコミュニケーションを重ねていくことも重要になる。科学技術とルールに対する信頼を高め、科学的な「安全」を国民の「安心」に結びつける努力が望まれる。
(※1) 「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」
(※2)「『原子力規制委員会設置法』について」平成24年6月、内閣官房
(※3)報道発表資料「『環境基本法の改正を踏まえた放射性物質の適用除外規定に係る環境法令の整備について』(中央環境審議会意見具申)について(お知らせ)」環境省
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