環境基本法

2012年7月31日

解説

戦後の経済復興期には、経済発展に伴う公害の発生が深刻な事態となり、公害の防止と自然環境の保護を総合的かつ計画的に進めるべく、「公害対策基本法」(1967年)と「自然環境保全法」(1972年)が制定され、その後の環境行政の基本となった。しかし、1990年代になると、自動車の排気ガス、生活排水、生活ゴミなどの日常生活からの排出物や増大するエネルギー消費などが環境にとって大きな負荷となり、都市化や近代化の広がりに伴う自然環境の破壊や野生生物の絶滅が危惧される状況もみられた。また、気候変動などの地球規模での環境問題も認識され、従来の枠組みを超えた新たな基本法が求められた。このような中、政府から中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会に対して「地球化時代の環境政策のあり方について」の諮問があり、両審議会の合同部会において検討が進められ、「環境基本法制のあり方について」(1992年)が答申された。この答申を踏まえ、翌93年に環境基本法案が国会に提出され成立するとともに、公害対策基本法は廃止された。

環境基本法(※1)では、環境保全の基本理念として以下の3点を挙げている(第3条~第5条)。

  1. 環境の恵沢の享受と継承等
  2. 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等
  3. 国際的協調による地球環境保全の積極的推進

環境基本法は、国、地方自治体、事業者、及び国民の責務について定めており、事業者は、公害を防止し自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務があり、国民も日常生活に伴う環境負荷の低減に努めなければならないとしている(第6条~第9条)。環境保全の指針としては、以下の3点が掲げられている(第14条)。

  1. 環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること
  2. 生物多様性の確保が図られ、多様な自然環境が自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること
  3. 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること

政府には、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための「環境基本計画」と健康保護と生活環境保全の上で望ましい「環境基準」を定めることが求められている(第15条~第16条)。また、公害防止計画、環境影響評価、経済的措置、国際協力等の国や地方自治体の施策についても定められている(第17条~第36条)。費用負担等については、公害等を発生させた主体による原因者負担と、自然環境の保全事業等により利益を受けた主体による受益者負担の原則が示されている(第37条~第38条)。このほか、環境保全のための組織として、環境省に中央環境審議会を置くとともに、特別の機関として公害対策会議を置くこととしている。また、都道府県や市町村にも、審議会その他の合議制の機関を置くことが定められている(第41条~第46条)

なお、環境基本法は、2012年6月に成立した「原子力規制委員会設置法(※2)」の附則に盛り込まれる形で改正されており、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置についても、環境基本法の対象に含まれることとなっている。

環境基本法改正内容

(※1)「環境基本法」法令データ提供システム
(※2)「原子力規制委員会設置法」原子力規制委員会

(2012年7月31日掲載)
(2013年7月31日更新)

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