2012年06月08日
サマリー
非構造化データは図表1のように、人から発生するものと、機械(センサー)から発生するものに大別される。人から発生するデータは、人が発生(発信)を意識的に行う、ソーシャルメディアでの書き込みや情報共有サイトへの情報公開等と、無意識に発生(生成)する購買履歴や移動情報等がある。機械(センサー)のデータとは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の元となるもので、車・家電・携帯電話のみならず、橋げたやビル、農地や自動販売機、家畜や人間等、あらゆる「モノ」の状態や変化のデータのことである。「ビッグデータ」を活用することで、防災や防犯、高度な医療や先進的な農業、交通渋滞の緩和等、社会システムの安全性・快適性・利便性・効率性等が高まると期待されている。
図表1 ビッグデータ例

(注)センサーの具体例は、『日経コミュニケーション』2012年4月号「ビッグデータ時代の新世代M2M M2Mの概要[第1回]『グーグル、アマゾンの対抗軸に 最終目標は持続可能な国づくり』」を参考にした
(出所)大和総研作成
スマートフォン(高機能携帯電話:スマホ)の普及やネットワーク環境の進化のおかげもあって、先進国のみならず世界中で、ソーシャルメディア発のデータは急増している。また、ネットショッピングやネットバンキング等、日々の活動もインターネット上で行われることが珍しくなくなった。今後は、生体モニタリング、気象予報、スマートグリッド等、センサー発のデータも急増するだろう。米EMC社(※3)が協賛した米IDC社(※4)の調査(※5)によれば、世界中のデータ量は2009年時点で80万ペタバイト(8千億ギガバイト(※6))あり、2020年には44倍の35ゼタバイト(35兆ギガバイト)になるという。また、非構造化データが9割以上を占めているとしている(※7)。そのためIT業界では、「ビッグデータ」に関する新たなビジネスチャンスへの期待が大きく、2011年頃から、IT関連雑誌等で目にする機会が多くなった。
2012年に入ってからは、「ビッグデータ」という言葉が一般紙やテレビでも使われ出しており(図表2)、これから一般にも広まる可能性が出てきた。ただし現時点では、IT業界や、きめ細やかな個人のデータをマーケティング等に活かしたい企業の推進機運が強く、デメリット・注意点が隠れがちである。ソーシャルメディアやスマホでは個人情報の漏えいを発端とした、詐欺や犯罪等のリスク(※8)が懸念されているが、「ビッグデータ」は、ソーシャルメディアやスマホとの関連性が高い。またセンサーデータは、個人が気づかないうちに収集されることになるので、さらに取り扱いには注意を要する。
図表2 マスメディアにおける「ビッグデータ」登場例

(注1)検索条件:検索日は2012年5月29日、キーワードは「ビッグデータ」、期間は2011年1月1日~最新
(注2)日経コンピュータ、日経情報ストラテジー、日経SYSTEMS、日経ソリューションビジネス、日経Windowsプロ、日経インターネットソリューション、日経ソフトウエア、日経Linux、日経IT21、日経ITプロフェッショナル
日経コミュニケーション、日経ネットビジネス、日経NETWORK
日経エレクトロニクス、日経ものづくり、日経マイクロデバイス、日経デジタルエンジニアリング、日経Automotive Technology
(注3)日経ビジネス、日経トップリーダー、日経エコロジー、日経エネルギー、日経BPガバメントテクノロジー、日経ビジネスアソシエ、日経ビズテック、日経アドバンテージ
日経アーキテクチュア、日経コンストラクション、日経ホームビルダー
日経デザイン、日経レストラン、日経食品マーケット
日経メディカル、日経ヘルスケア、日経バイオビジネス、日経ドラッグインフォメーション、日経メディカル Cancer Review
日経TRENDY、日経マネー、日経ヘルス、日経ヘルスプルミエ、日経ヘルス for MEN、日経WOMAN、日経おとなのOFF
(注4)日本経済新聞(朝刊、夕刊)、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞
NHKニュース、日本テレビニュース、週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド、週刊エコノミスト
(出所)紙媒体は、日経BPのWebサイトの検索結果と日経テレコン21の検索結果をもとに大和総研作成
放送は、公開資料をもとに大和総研作成
図表2で紹介した番組の中には、視聴者からのコメントが公開(※9) されているものがあり、そこには、「ビッグデータ」推進側の言い分(利便性向上と情報セキュリティのトレードオフ)に対する批判もみられる。現在は、「ビッグデータ」を活用することによる、経済的便益(新しいビジネスモデル等のイノベーション)と社会的便益(社会システムの利便性向上等)に焦点があたっている。しかし、「ビッグデータ」を使わないことによる社会的なリスクの回避が社会的便益と言える場合もある。そこで、どのような目的のもと、どのような利害を比較して、どのように判断したのかという経緯を明確にすることが求められる。判断の透明性が確保されれば、「ビッグデータ」を収集される側の理解や、イノベーションが促進されるだろう。これは「ビッグデータ」活用を推進するIT業界のみならず、「ビッグデータ」を活用したい企業にも求められる姿勢である。「ビッグデータ」がIT業界用語で終わるのか、一般の人にも認知されるのか、あるいは、認知度は上がるものの「うわべの便利は、もうけのネタ(※10)」とみなされて反感を買ってしまうのか、2012年は分水嶺になりそうである。
(※1) 従来、企業が管理・活用してきた顧客データ等を構造化データといい、画像や動画等の、従来のデータベースでは管理しにくいデータを非構造化データと呼ぶ。
(※2)Velocityの和訳は速さや速度。
(※3)クラウドシステムやデータセンター等の開発を始め、ITサービスを提供するグローバル企業。
(※4)International Data Corporation IT業界における市場調査やコンサルティングを行っている企業。
(※5)IDC「The Digital Universe Decade ? Are You Ready? May 2010」
(※6)例えば、最近のスマホやデジタルカメラの内蔵メモリは16ギガバイト、外部メモリは32ギガバイトといった容量がある。 キロ<メガ<ギガ<テラ<ペタ<エクサ<ゼタ(ゼッタ)<ヨタ(ヨッタ)
(※7)IDC「The 2011 Digital Universe Study: Extracting Value from Chaos」
(※8)大和総研 小黒由貴子「『情報弱者』の再定義が求められる2012年」
(※9)NHK 週刊 ニュース深読み『スマホも!IC乗車券も! わたしたちの"個人情報"が知らぬ間に流出?』
(※10)NHK 週刊 ニュース深読み『スマホも!IC乗車券も! わたしたちの"個人情報"が知らぬ間に流出?』の「テーマに寄せられたご意見」記事ID:6463
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
気候関連開示を投資家は必要としているか?
米国気候関連開示規則廃止案を巡ってアカデミズムでも激しい論争
2026年07月14日
-
GPIFのサステナブル投資はどこに向かうのか
ESG投資の大幅削減の裏側にはGPIFが抱える根本的な課題あり
2026年07月13日
-
2026年3月期有報の人的資本開示①
既存欄と新設欄(人材戦略に関する基本方針等)の情報分散に課題
2026年07月07日
最新のレポート・コラム
-
中間配当の導入は株価を動かすか
開示直後は好感されるも、効果のインパクトや持続力は弱い
2026年07月17日
-
経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」による企業買収行動指針のポイント・Q&A(案)
指針の趣旨を明確化~「企業価値」や「望ましい買収」とは?~
2026年07月17日
-
「トランプ口座」始動、未来の株主多数輩出
口座開設、「収益獲得」ではなく「次世代投資家との接点」
2026年07月17日
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

