2011年08月15日
サマリー
英国で2002年に導入されてから、欧州各国で制度の構築が進み、米国でも2010年の金融規制改革法によって、2011年1月以降の株主総会からSAY ON PAYが始まった。経営者報酬が企業業績や株価、物価上昇率、賃金上昇率などと無関係に高額化したことから、投資家や労働者の不信感が高まり、経営者報酬を形づくるプロセスに株主が関与する機会を設けることで、経営者が自分自身の報酬を独断的に決めることが無いように牽制しようとする意図に基づいて制度化が進められた。
とはいえ、米国や多く欧州諸国のSAY ON PAYでは、株主の投票結果が経営者を拘束することを認めていない。つまり、いかに多くの株主が経営者報酬に反対していようとも、経営者は思い通りの報酬を受け取ることが許される。拘束力の無い投票の結果で示された株主の要望に従うか否かは、将来的に経営者自身が決めるべきことなのである。
今年初めて実施された米国のSAY ON PAYで投票によって示された株主の意向は、概ね経営者の方針を承認するものであった。株価指数ラッセル3000構成銘柄では、7割以上の企業で90%以上の賛成が得られたという(図表)。機関投資家が、経営者報酬議案への賛否を検討する場合に重視するのは、報酬が何らかの形で業績連動になっているかという点だ。経営者が業績向上に取り組むための適切なインセンティブを持つことは、株主にとっても望ましいからだ。これをPAY FOR PERFORMANCEという。企業側が開示する経営者報酬の方針は、基本的に業績連動型報酬であることを明確に示すものとなっている。
過半数の賛成を得ることができなかった企業も少なからずあったが、投票結果に拘束力は無いのであるから、否決ということではない。しかし、株主が経営者報酬に不満を抱いていることは投票結果に表れており、今後企業側には報酬体系の改革に取り組むことが期待されるだろう。ことは投票結果に現れているおり、今後企業側には報酬体系の改革に取り組むことが期待されるだろう。
◆図表1 米国SAY ON PAYの投票結果

(出所)Semler Brossy Consulting Group, LLC 「2011 Say on Pay Results: Russell 3000」
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