家計における金融資産と土地・住宅資産の保有の関係

『大和総研調査季報』 2017年春季号(Vol.26)掲載

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2017年06月01日

  • 金融調査部 研究員 森 駿介
  • 菅谷 幸一

サマリー

実物資産の保有動向やその背後にある不動産市場が家計の金融資産保有行動に与える影響を検討することが、本稿の目的である。


1970 年からの家計の保有資産残高を見ると、「土地から現金・預金へ」と構成が大きく変化している。実物資産に関する意識調査からは、現在の家計は土地・住宅を消費財と捉えている可能性が示唆される。


住宅を取得する世代ともいえる40 歳代以下の世帯の資産構成を見ると、ここ20 年間で資産全体に占める住宅資産の比率の上昇、負債の増加、金融資産に占める預貯金比率の上昇等の変化が見られた。


特に、最後の点に関して、日本の住宅資産が非流動的であることから、流動性の高い預貯金への選好が高まっているのかもしれない。裏を返せば、日本の中古住宅市場が未発達であることで家計のリスク性金融資産の保有が阻害されている可能性がある。「中古住宅流通度」と家計部門の「株式・投資信託比率」との関係を国際比較すると、緩やかながら正の相関が見られた。


家計の株式等の保有を通じた資産形成が進むには、未発達だと言われる日本の中古住宅市場の活性化が求められよう。


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