中国では、インターネットの普及によりネット通販市場が急拡大している。中国電子商務研究センター(100EC.CN、以下「100EC」と略称)の統計によると、2013年のネット通販市場の取引規模は1兆8,851億元(30.1兆円)に達し、 2012年に比べ42.8%増加した。EC経由による消費拡大を示す重要な指標である「社会消費品小売総額に対するネット通販取引額の割合」を見ると、2013年の割合が8%を超え、2012年より1.7%ポイント増えた。 また、中国のネット通販の市場規模は、2012年に日本を上回り、2013年に米国をも追い越し、国際的に見ても中国のネット通販市場の成長が著しい。ただ、先進国と比較した場合、中国のネット通販市場が高成長を遂げたのはいくつかの理由がある。

まず、先進国の場合、IT産業の発展が国の工業化の後に始まったのに対し、中国のIT産業は製造業等の工業とほぼ同時に発展してきた。その結果、先進国はIT化が進む前に伝統的な流通チャネルが形成されており、小売チェーンの市場集中度も高いため、ネット通販が新しい販売形態として普及するには時間かかる。一方、中国では小売チェーンの市場集中度が低いので、ネット通販が相対的に受け入れられやすい。
次に、中国の消費者は販売価格に対する感度が高く、販売価格を最も重要視している。IResearchが実施したアンケート調査によると、販売価格は中国の消費者がネット通販を選択するもっとも重要な理由になっている。

そして、宅配業界における熾烈な競争もネット通販市場の高成長に寄与した。商品の配送はネット通販事業において重要な要素である。配送コストがネット通販企業のコストに直接リンクするほか、配送効率も消費者の消費体験に影響する。100ECの調査によると、2013年6月末時点で中国に登録されている物流業者が約70万社あり、宅配業者も7500社以上ある。近年、多くの宅配業者が事業拡大を図っているため過当競争となり、利益度外視の価格競争が行われている。その結果、宅配件数が増加する一方、宅配単価が低下している。このような過当競争による配送コストの低下も、ネット通販業界の急成長をもたらしている。

最後に、ネット通販業者の多くはタオバオなどのサイトで店舗を経営する個人事業者であり、これらの個人事業者は工商部門に届出をしておらず、その多くは納税を怠っているというのが現状である。中国の税法では、EC企業に対する納税規定が定められていない。ネット通販業者に対する税制監督上の不備は、客観的に商品を極めて安い価格で販売できる条件を作らせたといえる。

今後も益々拡大し、魅力的な市場としてビジネスチャンスが見込まれるネット通販ビジネスだが、一方で、価格競争についていけない企業の撤退や、過当競争による値崩れによって商品の価値が損なわれるなどのリスクが存在するため、外国企業はネットビジネスへの参入を検討する際には、中国のネット通販事情をしっかり見極める必要があろう。
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