最近、日本の外食企業が中国などアジア新興国での出店を計画或いは加速させている、との報道をよく目にする。従来は中国企業との合弁形態での進出が主だったが、ここ数年は日系企業単独で進出する事例が増えている模様だ。中国の外食産業は、改革開放以来の経済拡大や近年のサービス産業育成の政策を背景に急速な成長を遂げており、2000年以降だけで見ても市場は約4倍にまで拡大している(図表1参照)。その拡大する外食市場を狙って、日系外食企業が今後さらに中国進出を推進していく可能性は十分にあるだろう。
ただ、とりわけWTO加盟以降、多くの外資系企業がこぞって成長する中国の外食市場への進出を試みてきたが、一部の成功企業を除いては苦戦を強いられている、との指摘も少なくない。実際、中国の外食企業数に占める外資系企業数の割合は、1999年の8.8%から2009年は2.9%にまで低下している(※1)。このように、外資系企業全体で見れば、中国外食市場の成長を享受し切れていない一面も垣間見える。
それでは、やはり日系外食企業が中国で成功するのは難しいのだろうか。確かに中国外食市場への積極的な進出及び展開に際しては、人件費や店舗賃料の高騰によるコスト上昇、FC展開する場合の衛生及びサービスに関する品質の管理、急速に変化する流行への迅速な対応など、クリアすべきハードルが少なくない。また、外食ビジネスにおいて幹となる自前の味やサービスの質は日系企業が管理、店舗立地の確保やサイドメニューの拡充などについては合弁パートナーの活用や現地ニーズに基づいた対策の立案、などといった役割分担も重要な課題となる。
一方で、弊社が過去に上海で実施したヒアリング調査や筆者の中国人知人の話では、日系外食店に対して、「衛生的である」、「雰囲気・サービス(接客)が良い」、「世界の各国料理の中で、日本料理が一番美味しい」など比較的ポジティブな意見も多く聞かれる。こうした現地での生の声は、日系企業が中国の外食市場に切り込む余地がまだまだ残されている可能性を感じさせるものである。これまで培ってきた繊細で独特な味や木目細かい高品質のサービスは、日系外食企業にとって大きな武器であり、また期待されている点とも言えよう。
よく指摘されるように、成功に至るまでのプロセスは各社様々で、確固たる成功マニュアルは存在しないのが現実だ。しかし、失敗経験の活用や地道な試行錯誤の蓄積を自社のメニューやサービスにフィードバックしていくことは、日系企業が得意とするところであり強みでもある。そこに一層の磨きを掛けることが、今後も引き続き拡大が見込まれる中国外食市場で成功するための源泉になり得るであろうと思われる。

(※1)出所:『中国統計年鑑』
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