日本企業によるM&Aの動向(2023年版)

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主席コンサルタント 田代 大助

サマリー

◆日本企業間で成立したM&A(In-In案件)については、中小企業の事業承継、上場子会社・関連会社の売却やMBOによる非上場化などの案件を中心として、2010年代に件数ベースで急拡大した。金額ベースでも足もと急回復しており、今後一層の拡大が期待される。また、案件が組成される上位5業種(件数ベース)は直近20年間で変わっておらず、「サービス業」、「その他金融業」、「情報・通信業」、「卸売業」、「小売業」で固定されている。

◆日本企業によるクロスボーダーM&A(In-Out案件、Out-In案件)では、件数・取引金額ともにIn-Out案件がOut-In案件を概ね上回っていること、米国企業が日本企業にとって最大のM&A取引相手であること、の2点に直近20年間で大きな変化はなく、この構図は今後も継続すると思料される。
In-Out案件ではASEAN企業、Out-In案件では中国企業のシェアが着実に高まっている一方、欧州3ヶ国企業とのM&A動向は安定的で緩やかな変化にとどまっている。

◆PMI(Post Merger Integration)の巧拙がM&Aの成否に直結するといっても過言ではなく、案件の開始当初からPMIを念頭に置いた計画策定や執行メンバーの選定が肝要である。経済産業省や東京証券取引所が策定・公表した各種指針やガイドラインに加え、PMIを含む案件執行の経験を通じて蓄積したノウハウや知見を有効活用することが、今後も日本企業のM&A拡大をさらに後押しするものと期待される。

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