コロナ禍におけるM&Aの動向について

〜ポストコロナのM&Aテーマを探る〜

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 遠藤 昌秀

サマリー

◆2020年の日本企業のM&A件数は、新型コロナウイルスの影響から2019年を下回ったが、2020年後半から回復に転じた。2021年1-6月の日本企業のM&A件数は2020年1-6月の件数だけでなく、過去最高の2019年1-6月の件数を上回っており、M&A市場は引き続き活況を呈している。

◆東証一部上場企業の中には、プライム市場の基準を維持するために流通株式比率を高めていくことが考えられ、また、流通株式時価総額が100億円未満になるなどプライム市場の基準を満たさなくなり、TOPIXの構成銘柄から除外されることになれば、株式需給の面から株価下落につながりかねず、今後、買収ターゲットになる可能性が増すことになる。また、改訂されたコーポレートガバナンス・コードの適用次第では親子上場の解消が一段と促進されることも考えられる。

◆「DX(デジタルトランスフォーメーション)」だけではなく、2050年にカーボンニュートラルの実現に向けた「脱炭素化」もM&Aの大きなテーマになっており、業種を問わない息の長いテーマになるものと考えられる。メディア関連において配信サービスの隆盛から「IP(知的財産)」の獲得に向けたM&Aの動きにも注目している。

◆日本版SPAC(特別買収目的会社)の上場が認められると、スタートアップ企業の創業者が支配権を維持しながら、成長資金の調達が容易になるだけでなく、上場した自社株式を利用したM&Aを行い、成長していくという新たな選択肢が生まれる。一方で、金融商品取引所がSPACの上場審査を行う体制をどのように構築していくのか、また、SPACとスタートアップ企業との経営統合ではいわゆる裏口上場とされる不適当合併等となるため、投資家保護をどのように保っていくのかが重要になってくる。

◆企業は、事業ポートフォリオについて、従来の延長線上ではなく、抜本的な見直しを図る動きを強めている。コロナ禍で不確実性が増す中で、企業は次代の成長を目指して試行錯誤を重ねている。ポストコロナにおいて一段と飛躍するためには、M&Aを活用した経営戦略が有効であることに疑いはなく、M&A市場は今後も堅調に推移していくものと思われる。

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