2021年10月01日
本稿では、執筆時点における85社の地域金融機関(※1)(以下、地銀)の人的資本の開示状況について考察を行う。中期経営計画(以下、中計)でも「人」「人材」「育成」は頻出ワードとなっており(※2)、大多数が戦略もしくは重要施策として位置付けている。地銀においては、本業の預貸ビジネスの持続可能性が問われる中、ビジネスモデルの改革やサービスの高度化を進めており、担い手である人材を重要戦略もしくは施策として位置付けていると考えられる。
一般的に、人材を戦略遂行上重要な「人的資源」と位置付けてマネジメントや各種施策によって最大限に活用することは広く意識されてきているが、昨年公表された人材版伊藤レポート(※3)等を契機に、人材を「人的資本」と捉えて中長期的な企業価値向上の観点で経営戦略と人材戦略を連動させる経営が注目されている。
多くの地銀においては、価値創造フレームワークや重要戦略の中核に人材を位置付けていることから「人的資本」と捉えているようにも見える。他方、開示資料に目を向けると内容も人材の位置付けも千差万別である。「削減すべきコスト」と感じられるものから、「地域や顧客に対して価値を提供する担い手」「中長期的な組織の競争優位性を決める存在」まで大きな違いがある。また、開示姿勢も様々で、人材戦略を積極的に訴求しようとする地銀がある一方、女性活躍推進法等で開示を求めるデータに限定していたり、一切開示がなかったりする例もある。以下、中計からだけでは見えにくい開示状況の違いについて考察を行いたい。
(※1)持株会社(フィナンシャルグループ、ホールディングス)は1社として取り扱う。りそなホールディングス傘下のみなと銀行、関西みらい銀行は対象外とする。
(※3)「持続可能な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」(令和2年9月 経済産業省)
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