2024年03月11日
サマリー
◆アクティビスト投資家の活動が活発化しており、ここ数年、株主提案数は過去最高を年々更新している。株主提案に至らずともアクティビスト投資家から面談依頼や書簡送付等を受けるケースが増加しており、多くの企業においてアクティビスト投資家とのエンゲージメント(目的を持った対話)は経営課題となっている。また、一般機関投資家も投資先企業とのエンゲージメントを積極的に実施していることに加え、一部は株主提案に至る事例も見られ、株主アクティビズムが一般化している。
◆そうした中、特にアクティビスト投資家等によるM&Aアクティビズムが資本市場で話題となっている。従来型の経営陣同士が合意したM&A取引に対し、TOB価格や経営統合比率に不満を持ち、当該価格・比率等の是正を狙って介入するだけでなく、自らをスポンサーとする非上場化や事業ポートフォリオの見直しの提案など、投資先企業に対しM&Aアクションを起因させるような行動も増えてきている。
◆上場企業としては、平時から企業価値向上に向けて能動的に取り組むことで、株主アクティビズムのターゲット企業となるリスクを低減させることが重要となる。特に、近年目立っているアクティビスト投資家等によるM&Aアクティビズムへの対応についても、平時からの企業価値向上への取組みに加え、一般株主の利益を意識したM&A取引への対応が求められている。
◆経済産業省の「企業買収における行動指針」(企業買収指針)の策定・公表以降、M&Aにおける上場企業側の説明責任は厳格化されている。企業買収指針を契機に、同意なき買収提案が増加すると共に、アクティビスト投資家等によるM&Aアクティビズムも活発化すると考えられる。そうした潮流に対し、上場企業は平時から企業価値向上に向けた取組みを実行し、有事においては、平時からの企業価値向上に向けた取組みの実績を武器に、一般株主からの経営陣に対する支持を集めることが求められる。
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