2024年6月株主総会シーズンの総括と示唆

機関投資家の議決権行使の同質化により議案賛成率は2極化

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 吉川 英徳
  • コーポレート・アドバイザリー部 コンサルタント 山本 一輝
  • コーポレートバリュー・アドバイザリーチーム

サマリー

◆2024年6月株主総会はアクティビスト投資家等による株主提案が過去最高タイとなる90社に上っただけでなく、機関投資家の議決権行使基準の厳格化の影響もあり、株主総会が「企業価値向上に対する経営評価の場」となった。特に本年は不祥事企業や低ROE企業、過大な政策保有株式を有する企業の取締役選任議案に対して従来以上に機関投資家の反対票が集まった。賛成率が50%台~60%台にとどまった経営トップ選任議案も散見され、機関投資家の議決権行使における企業価値に対する目線の厳しさが伺える。

◆一方で、主要企業500社(TOPIX500)の2024年6月株主総会シーズンに上程された議案の議決権行使結果の分析では、会社提案議案全体の平均賛成率は95.3%(前年同期比+0.2%pt)であった。多くの議案が95%以上の賛成率を確保している点を踏まえると、機関投資家の議決権行使基準の厳格化が進む一方で、上場会社側もそれらの動きに対して適切に対応している結果ともいえる。ただし、経営トップの取締役選任の賛成率が80%未満となる主要企業も53社(約1割)あり、「議案賛成率の二極化」が進んでいる。背景には、機関投資家の議決権行使基準の同質化が進み、当該基準に抵触する議案については反対票が集中しやすい傾向がある。

◆2025年6月株主総会における論点としては、「機関投資家の議決権行使基準の変更」、「対話・議決権行使活動の実質化を求める動き」及び「アクティビスト投資家の活動」等が考えられる。機関投資家による企業価値を軸とした「対話」が来年株主総会シーズンに向けても引き続き活発に行われる。そうした中、特に低PBR、過大な政策保有株式の保有、低ROE等、企業価値向上の観点から課題のある上場企業が取締役選任議案など会社提案議案について機関投資家等から支持を得るためには、企業価値向上に向けた経営陣の「覚悟」を示す必要があると考える。

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