2024年09月13日
サマリー
◆買収対応方針(買収防衛策) の導入社数は2024年6月末で251社となっている。前年同月比12社減であり、引き続き買収防衛策の導入社数は減少傾向にある。2024年6月株主総会シーズン(2023年7月~2024年6月)における買収防衛策の導入・廃止・継続の状況は新規導入6社(うち2社が特定標的型の有事導入)、継続64社、廃止・非継続13社であった。
◆買収防衛策の導入社数が減少している背景には、機関投資家の買収防衛策に対する目線が厳しく株主総会等での継続議案に対して賛成票確保が難しい点、有事導入型が実務的に定着してきており平時から買収防衛策を導入する理由が薄れてきている点、がある。
◆2023年8月の経済産業省による「企業買収における行動指針」の策定以降、日本企業に対する同意なき買収が目立ってきている。一方で、企業買収行動指針においては「真摯な提案」に対しては企業価値の観点から「真摯な検討」が求められており、買収防衛策の有無に関わらず取締役会が企業価値の観点から適切な対応をすることが期待されている。また、改正金融商品取引法により公開買付制度が大幅に変更され、市場内買付を含めて30%超の株式取得に対して公開買付規制の範囲となる。
◆企業買収行動指針の策定や公開買付制度の改正により、買収防衛策の役割の大部分は終えたという見方がある一方で、依然として、ステルス買収者など濫用的買収者による30%以下の株式取得については制度的な手当は不十分であるとの見方もある。ステルス買収者を未然に防ぐという観点からは平時より企業価値向上に向けた不断の努力が必要であり、また有事の際は、その兆候をいち早く察知し買収防衛策の有事導入など迅速な対応が求められる。その際には、企業買収行動指針で求められている3原則「企業価値・株主共同の利益の原則、株主意思の原則、透明性の原則」を踏まえ、企業価値の維持・向上の観点から説得力ある証跡と適切なプロセスを経たうえでの対応が求められる。
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