地域・パブリック
人口減少時代における経済波及効果計測の意義

2013年3月6日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 主任コンサルタント 米川 誠

平成22年国勢調査の結果によると、平成17年から平成22年の5年間で38道府県において人口が減少し、人口が増加した都府県はわずか9都府県となっている。また人口が増加した首都圏においても、国立社会保障・人口問題研究所の推計(2007年)によると、首都圏(1都3県)の人口は2015年ごろをピークに減少に向かい、東京都に限っても、2020年ごろをピークに減少に向かうとされている。また、高齢化の進行も進み、首都圏では、65歳以上人口の比率は2010年の約2割から2030年ごろには3割を超え、東京都でも2035年には3割を超えるものと推計されている。人口減少・少子高齢化の進展は近い将来、地方圏のみならず大都市圏においても訪れる現象である。

このような人口減少・少子高齢化時代の到来に当たっては、使える財源も制約が厳しくなることが予想されるなかで、できるだけ少ない投資でいかに地域経済を効率的に活性化させるかは今後大きな課題になってくると考えられる。同じ額で同じ施策の投資でも地方自治体によって地域に与える効果は変化する。各施策が地域にどのような影響を及ぼすかを知ることが、人口減少時代にあたってますます重要になると考えられる。
経済波及効果の分析では、実施する施策が、経済へどのような影響を及ぼすかを計測・予測し、どのような施策を展開すると地域経済をどのように活性化されるかという指標を明らかにすることができる。

たとえば、ここでは空港建設への投資を考えてみたい。まず、建設期間中に発生する経済波及効果がある。これは空港が建設されるには鉄筋やコンクリート、アスファルト等が必要となり、さらにそれを生産するための材料が必要になるという具合に関連産業に次々に波及していく効果であり、フロー効果と呼ばれる。ただし、これは建設期間中のみに発生する一時的な効果であり、より重要なのは、ストック効果と呼ばれる空港開港後に発生する経済波及効果である。例えば具体的には、新たに便が就航すると、地域を訪問する国内外の観光客やビジネス客が増加し、消費需要が増加する。また就航便数の増加により輸出入や物流が活性化し、関連企業の生産増加や設備投資が増加するという経済効果も期待できる。さらにはそれらの経済波及効果によって、地域の雇用や税収が増加するという効果も期待できる。空港の容量拡張に伴い新たに国際線・国内線が就航することによる地域経済活性化を期待している自治体が多いのは、上記の幅広い経済波及効果が期待できるからである。

(例)公共事業

経済波及効果の計測はこれまでも大規模な投資やイベントがあるたびに算出が行われてきたが、人口減少時代に当たっては、これらの投資による経済波及効果の計測の意義はますます高まるものと考えられる。

まず第1に、政策形成に当たってのツールとしての重要性の高まりである。地方分権化の推進によって、自地域の政策形成は自地域で考える能力が必要となってきている。より効果的な地域政策を展開していくには、どの政策が最も妥当なのかを十分に検討した上で、政策を選択していかなければならない。経済波及効果分析は、生産誘発額に加え、付加価値誘発額、雇用誘発者数、税収増加額など幅広い分析が可能である。経済波及効果分析はどの政策を実施するのが望ましいかを判断するための的確な判断材料を提供する分析である。
第2に人口減少に伴う財政制約の高まりである。人口減少や労働力の減少に伴い、地方自治体の財政制約はより厳しい状況になりつつある。財政制約が厳しくなる中では、より費用対効果の高い政策の実施がこれまで以上に求められることとなる。経済波及効果分析はそのための有用な分析ツールとなる。
第3に経済社会が大きく変化している時代を迎えていることが上げられる。特に経済のグローバル化の流れは地方経済に大きな影響を及ぼしている。例えば、工場の海外移転等により、これまで経済波及効果が高いと考えられていた産業が他の産業に入れ替わるなどといったことや、グローバル化に伴い、海外から人や物や企業が来るようになるという具合である。このような経済構造の変化に対応して、従来から行われてきた政策の効果も大きく変化すると考えられ、政策担当者としては、これらの政策を続けることが正しいのか常にチェックする必要がある。
第4に住民に対する説明責任(アカウンタビリティ)の高まりがあげられる。近年、住民の税金の使い道に対する関心はますます高まりつつあり、政策の効果について、住民への説明責任の必要性は高まりつつある。限りある財政の中で、行政がなぜその政策をとるのかについて、経済波及効果の結果を示すことにより住民に明確に説明することができ、経済波及効果分析はその説明責任を果たす一助となる。

上述した経済波及効果は通常、産業連関表を用いて行われる。幸い、日本では産業連関表の整備は充実しており、全国版に加え、各都道府県、政令指定都市の多くが自地域の産業連関表を作成している。産業連関分析では、交通インフラ整備、入込客の増加、企業立地や企業生産の拡大、各種イベント等による経済波及効果を極めて単純でわかりやすい数値で示すことが可能である。政策担当者が今一度、自地域で実施しているまたはこれから実施予定の施策を振り返り、各施策の経済波及効果の検証を行う意義は大きいと考えられる。

 

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