サマリー
◆経済見通しを改訂:2016年7-9月期GDP二次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2016年度が前年度比+1.3%(前回:同+1.1%)、2017年度が同+0.9%(同:同+0.9%)である。先行きの日本経済は、①実質賃金の増加、②原油安と交易条件の改善、③経済対策の実施、などの国内要因が下支え役となり、緩やかに回復する見通しである。ただし、米国大統領選挙におけるトランプ氏の勝利が、主に①円高、②株安、③世界経済の減速、という波及経路を通じて日本経済に負の影響を与えるリスクがある。(→詳細は、熊谷亮丸他「第191回 日本経済予測(改訂版)<訂正版>」(2016年12月16日)参照)。
◆企業の海外投資行動に見られる特徴と国内への波及効果:日本経済の潜在成長率と期待成長率が低水準にとどまる中、企業は海外展開に成長の活路を見出している。国内法人と海外現地法人の投資行動を分析すると、合理的な戦略の下、国内の設備投資を絞り、アジアや北米に資源を振り向けていることが分かる。また、足下では実質GDPと実質GNIの乖離が大きくなっている。これは、交易条件の改善に加えて、企業の海外投資の進展に伴い海外現地法人からの所得が国内に還流していることによるものである。2015年度の実績値に基づくと、海外利益の国内還流による押し上げ効果は、雇用者報酬が3.2兆円、名目個人消費が2.4兆円程度と試算される。
◆日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①トランプ氏の政策、に加えて、②中国経済の下振れ、③米国の「出口戦略」に伴う新興国市場の動揺、④地政学的リスクおよび政治リスクを背景とする「リスクオフ」、⑤英国のEU離脱交渉や欧州金融機関のデレバレッジ、の5点に留意が必要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2017年の世界経済 ~上下いずれのリスクも米国次第~
2016年12月21日
-
第191回日本経済予測(改訂版)<訂正版>
トランプ・ショックで日本経済に何が起きるのか?~①海外投資行動、②個人消費、③経済統計の改善を検証~
2016年12月16日
同じカテゴリの最新レポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
主要国経済Outlook 2025年9月号(No.466)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年08月25日
-
マーケットは堅調も、米国経済の不透明感は増す
2025年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日