風力発電は、風車を使って風の運動エネルギーを回転エネルギーに変換させ、発電機を回してエネルギーを得るシステムである。陸上風力発電の発電コストは9.9~17.3円/kWh(2010年時点のモデルプラントによる試算値)(※1)であることから、他の再生可能エネルギーと比較して経済性に優れている。また、国産エネルギーであることやCO2を排出しない電源であることから、エネルギー安全保障および温暖化対策の観点からも世界的に導入が進んでいる。風況の良い場所が偏在していることや、発電量が安定しないこと等を克服することが課題となっている。
世界の発電量に占める風力発電の割合は2011年で2.0%(※2)にすぎないが、世界の風力発電設備導入量は年々増加している(図表1)。2013年末時点における累積導入量は318GWとなっているが、そのうち中国(29%)、米国(19%)、ドイツ(11%)の上位3か国で世界の60%近くを占めており、近年中国、インドなど新興国における導入量増加が目立ち始めている。今後も、新興国における導入拡大や、技術革新に伴う洋上風力発電の普及などにより世界の導入量は増加すると予想される。
日本の風力発電設備の導入量は、2013年末時点で2,661MW(世界の0.8%程度)であるが、環境省の調査(※3)によれば日本における風力発電の導入ポテンシャルは陸上で283GW、洋上で1,573GWと非常に大きい。しかし、風況の良い場所が東北と北海道に偏在していることから、実際にポテンシャルを活用するためには、電力系統や地域間連系線の強化など様々な対策が必要である。

(※1)国家戦略室エネルギー・環境会議「コスト等検証委員会報告書」(平成23年12月19日)。再生可能エネルギー発電の発電コストとして、太陽光発電(メガソーラー)は30.1~45.8円/kWh、小水力発電は19.1~22.0円/kWh、バイオマス発電(木質専焼)は17.4~32.2円/kWh、地熱発電は9.2~11.6円/kWhと試算されている(いずれも2010年時点のモデルプラントによる試算値)。
(※2)IEA “World Energy Oulook2013”
(※3)環境省「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」
(2011年8月29日掲載)
(2012年7月31日更新)
(2014年7月24日更新)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日