サマリー
◆2024年7月3日に、公的年金の定期健康診断とも呼ばれる「財政検証」が公表される予定だ。とりわけ注目されるのが「モデル年金」の最終的な「所得代替率」である。前回2019年の財政検証の代表的なケースでは、所得代替率は2019年度の61.7%から2047年度に50.8%へと低下するとの試算結果が示された。
◆足元までの積立金の上振れ、政府の経済前提、被保険者数の変化を踏まえ、大和総研の年金財政モデルを用いて簡便に推計すると、最終的な所得代替率は57.4%に改善する結果となった。2019年の財政検証の想定から100兆円程度上振れしたとみられる積立金の効果がとりわけ大きい。公的年金制度の持続性は5年前から高まったといえる。
◆だが、公的年金の抱える問題が全て解決したわけではない。現役世代の手取り収入に対する基礎年金の受給額の比率(基礎年金の所得代替率)は、現状から1~2割程度低下すると試算される。解決策の一つとして、制度上は別々に運営されている国民年金と厚生年金の積立金を統合するという考えがあるが、厚生年金の給付が抑制される可能性や国庫負担の増加といった問題がある。様々な観点を踏まえた丁寧な議論が必要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
DC自動移換者問題の解決に向けて
自動移換者を「発生させない」「増やさない」対策が求められる
2025年03月03日
-
年金積立金の平滑化メカニズムにリスクはないか?
GPIFの2024年度3Q運用実績と年金財政の動向
2025年02月19日
-
少子化対策の財源確保に向けた医療・介護の歳出改革
医療・介護費の伸びを抑制する視点がますます重要に
2025年02月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日