公的年金の最終的な所得代替率は大幅に改善する可能性

積立金、経済前提、被保険者数の変化を踏まえ2024年財政検証を予想

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2024年06月27日

サマリー

◆2024年7月3日に、公的年金の定期健康診断とも呼ばれる「財政検証」が公表される予定だ。とりわけ注目されるのが「モデル年金」の最終的な「所得代替率」である。前回2019年の財政検証の代表的なケースでは、所得代替率は2019年度の61.7%から2047年度に50.8%へと低下するとの試算結果が示された。

◆足元までの積立金の上振れ、政府の経済前提、被保険者数の変化を踏まえ、大和総研の年金財政モデルを用いて簡便に推計すると、最終的な所得代替率は57.4%に改善する結果となった。2019年の財政検証の想定から100兆円程度上振れしたとみられる積立金の効果がとりわけ大きい。公的年金制度の持続性は5年前から高まったといえる。

◆だが、公的年金の抱える問題が全て解決したわけではない。現役世代の手取り収入に対する基礎年金の受給額の比率(基礎年金の所得代替率)は、現状から1~2割程度低下すると試算される。解決策の一つとして、制度上は別々に運営されている国民年金と厚生年金の積立金を統合するという考えがあるが、厚生年金の給付が抑制される可能性や国庫負担の増加といった問題がある。様々な観点を踏まえた丁寧な議論が必要だ。

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