サマリー
◆2024年3月28日に、社会保障審議会企業年金・個人年金部会は中間整理案を公表した。中間整理を踏まえると、今後の改正案の1つとして、私的年金制度(iDeCo・企業型DC・確定給付型の企業年金)における共通の生涯拠出限度額を設定した上で、その範囲内で各制度における月々の拠出限度額を柔軟化することが考えられる。
◆これまで、企業型DCの月間拠出限度額の算定は、大多数の労働者が、公的年金と合わせて退職前給与の6割を確保することが私的年金として望ましいという考え方を基準にしてきた。新たに生涯拠出限度額を設ける際は、この考え方を踏襲した上で、必要な見直しを行うことが考えられる。
◆現在の企業型DCの月間拠出限度額である月5.5万円は、20歳から65歳まで45年間の拠出を行ったとき、片働き世帯において、労働者のうち年収の低い方から75%程度までの人が、「望ましい年金原資」を積み立てることができる水準に相当する。本レポートの試算では、従来通りの片働き世帯を前提とした場合であっても、私的年金の生涯拠出限度額は、少なくとも現在の毎月の拠出限度額の45年分である、2,970万円以上とする必要があることが示唆される。
◆単身世帯や共働き世帯では、公的年金による所得代替率が低くなる分、退職前給与の6割を確保するためにはより多くの私的年金を必要とする。本レポートの試算では、単身世帯や共働き世帯においても退職前給与の6割の年金を得る機会を保障するには、私的年金の生涯拠出限度額を3,900万円以上とする必要性が示唆される。
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