サマリー
◆社会保障審議会年金部会では遺族年金の支給要件の男女差解消に向けた議論が進められている。男女差は、配偶者死亡時に18歳未満の子がいない場合の遺族厚生年金について特に顕著で、現行では原則女性にのみ行われる終身給付を、有期給付または廃止とする方向で検討が行われている。
◆本レポートでは「夫婦のみの世帯」の夫婦それぞれの年齢階級別の年収分布をもとに、本人年収200万円を経済的自立の目安として、遺族厚生年金の必要性につき再考した。
◆「夫婦のみの世帯」の夫は、20代から50代にかけて、本人年収200万円未満の割合が低く、妻が亡くなった場合に経済的自立が困難となる者は少ない。「夫婦のみの世帯」の妻は若い世代においては年収200万円未満割合が同年代の未婚女性と同程度にとどまり、かつ、今後も低い状態を保つものと見込まれる。他方、一定世代より上では年収200万円未満割合が半数を超えている。世代の線引きの目安としては、2022年時点の30代以下である、1983年以後生まれ頃とすることが考えられる。
◆以上を踏まえると、配偶者死亡時に18歳未満の子がいない場合の遺族厚生年金について、1983年生まれ頃以後の世代につき、有期給付または廃止とすることで男女差を解消することが考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
介護情報基盤の構築に向けた現状と課題
全国実施の遅れは地域包括ケアシステムの推進にもマイナスの影響
2025年07月10日
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
対象者拡大から8年、今後のiDeCoの可能性
iDeCo加入者数363万人(2025年3月末)、対象者拡大前の12倍に
2025年05月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日