若い世代に限れば遺族厚生年金の男女差解消は可能

「夫婦のみの世帯」の夫婦それぞれの年収分布に基づく分析

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2023年10月19日

サマリー

◆社会保障審議会年金部会では遺族年金の支給要件の男女差解消に向けた議論が進められている。男女差は、配偶者死亡時に18歳未満の子がいない場合の遺族厚生年金について特に顕著で、現行では原則女性にのみ行われる終身給付を、有期給付または廃止とする方向で検討が行われている。

◆本レポートでは「夫婦のみの世帯」の夫婦それぞれの年齢階級別の年収分布をもとに、本人年収200万円を経済的自立の目安として、遺族厚生年金の必要性につき再考した。

◆「夫婦のみの世帯」の夫は、20代から50代にかけて、本人年収200万円未満の割合が低く、妻が亡くなった場合に経済的自立が困難となる者は少ない。「夫婦のみの世帯」の妻は若い世代においては年収200万円未満割合が同年代の未婚女性と同程度にとどまり、かつ、今後も低い状態を保つものと見込まれる。他方、一定世代より上では年収200万円未満割合が半数を超えている。世代の線引きの目安としては、2022年時点の30代以下である、1983年以後生まれ頃とすることが考えられる。

◆以上を踏まえると、配偶者死亡時に18歳未満の子がいない場合の遺族厚生年金について、1983年生まれ頃以後の世代につき、有期給付または廃止とすることで男女差を解消することが考えられる。

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