拠出金負担が増す健保組合にできること

レセプトデータの分析による効率的な給付抑制が期待される

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2022年12月09日

サマリー

◆健康保険組合(健保組合)の2021年度の経常収支は▲825億円と、8年ぶりの赤字が見込まれる。背景には、高齢者医療に充てるための拠出金が増えている影響もあるが、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年度を除いて、加入者向けの法定給付費が一貫して伸びてきたという事情もある。

◆これまでも健保組合は、特定健康診査・特定保健指導の実施を通じて予防・健康づくりを進めたり、後発医薬品の使用を促進したりすることで、医療費の伸びの抑制に努めてきた。だが、前期高齢者向け医療費の負担方法について見直しが検討されているなど、健保組合が直接コントロールできない拠出金負担のさらなる増大が懸念されている。

◆高齢者医療の負担と給付の見直しが求められるが、健保組合自身ができることとして、加入者向け医療給付費を一層効率化していく必要もある。レセプトデータの分析を、後発医薬品の使用促進だけでなく、受診行動の適正化やリフィル処方箋の活用、かかりつけ医を持つことの推奨等に効果的に活用することが期待される。

◆ただし、健保組合が加入者にかかりつけ医機能の利用を促すことが有効かどうかは、政府が進めようとしているかかりつけ医機能の定義づけや報告制度のあり方に大きく左右されることから、今後の具体的な制度設計に向けた議論に注目する必要がある。

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