健保組合に求められる保健事業の強化

財務の安定性がみられる今こそが母体企業にとっても好機

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2022年07月27日

サマリー

◆健康保険組合(健保組合)の経常収支は直近の2020年度まで7年連続で黒字が続き、黒字組合の割合が7割に近づくなど、財政悪化に歯止めがかかったように見える。だが、2023年度以降は団塊の世代が75歳以上になり始めることから、高齢者医療費の一定割合も負担しなければならない健保組合の財政は一段と悪化する懸念がある。

◆たしかに、コロナ禍が発生して以降、75歳以上の受診率は低下しているにもかかわらず、後期高齢者人口の増加によって75歳以上の最近のレセプト件数はコロナ禍前の水準を上回っており、後期高齢者数の増加は健保財政に悪影響を及ぼすとみられる。引き続き、医療の効率化が重要である。

◆他方、健保組合の剰余金の積立は2008年度以降で最も高い水準に達しており、足下の財務状況は比較的安定している。義務的経費に占める高齢者医療向けの拠出金割合が5割に迫る中、被保険者の納得感を高めつつ将来の給付費の伸びを抑制するため、健保組合には今こそ加入者向け保健事業の一段の強化が求められる。

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