サマリー
◆健康保険組合(健保組合)の経常収支は直近の2020年度まで7年連続で黒字が続き、黒字組合の割合が7割に近づくなど、財政悪化に歯止めがかかったように見える。だが、2023年度以降は団塊の世代が75歳以上になり始めることから、高齢者医療費の一定割合も負担しなければならない健保組合の財政は一段と悪化する懸念がある。
◆たしかに、コロナ禍が発生して以降、75歳以上の受診率は低下しているにもかかわらず、後期高齢者人口の増加によって75歳以上の最近のレセプト件数はコロナ禍前の水準を上回っており、後期高齢者数の増加は健保財政に悪影響を及ぼすとみられる。引き続き、医療の効率化が重要である。
◆他方、健保組合の剰余金の積立は2008年度以降で最も高い水準に達しており、足下の財務状況は比較的安定している。義務的経費に占める高齢者医療向けの拠出金割合が5割に迫る中、被保険者の納得感を高めつつ将来の給付費の伸びを抑制するため、健保組合には今こそ加入者向け保健事業の一段の強化が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
介護情報基盤の構築に向けた現状と課題
全国実施の遅れは地域包括ケアシステムの推進にもマイナスの影響
2025年07月10日
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
対象者拡大から8年、今後のiDeCoの可能性
iDeCo加入者数363万人(2025年3月末)、対象者拡大前の12倍に
2025年05月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日