サマリー
2019年8月末、財政検証結果が公表された。経済成長が進めば将来の給付水準は所得代替率で50%を維持できるが、低成長の場合には50%を維持できなくなるとの結果であった。成長戦略の実行はもとより、公的年金の改革が急がれるが、同時に重要なのが私的年金のさらなる拡充である。本稿ではその拡充策を行動経済学の知見から考察した。
海外では、様々な分野で行動経済学の知見が応用されている。米国や英国などの国では、資産運用や年金制度の設計においては、加入率向上のための自動加入方式の導入や、効率的な資産運用を支援するためのデフォルト・ファンドの設定等における応用例があり、その成果も報告されている。一方、スウェーデンの事例からは、デフォルト・ファンドの有効性があらためて示され、日本のDCの課題を改善する上で、重要な示唆を与えるものである。
海外の事例、またこれまでの日本における議論の状況からすれば、日本の私的年金の拡充策としては、企業年金の導入が進まない中小企業への自動加入方式の導入と、デフォルト・ファンド設計を再考する必要性が指摘できるのではないだろうか。
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