サマリー
◆国内の65歳以上高齢者は、2015年から2025年までの10年間で262万人増加すると推計されており、介護需要の増加が見込まれている。本稿では、介護離職ゼロを実現するために特に有効と考えられる特別養護老人ホーム(以下、特養)などの入居型サービス(以下、介護施設)が2025年までにどの程度必要となるのか、都道府県別に簡単に示したい。
◆政府は健康寿命の延伸を目指しているが、要介護要支援認定者および、要介護3以上と認定される高齢者の割合が大幅に減少するという楽観はし難いだろう。家族の負担が少ない介護施設の定員数は要介護要支援認定者の16%をカバーする程度しか整備されておらず(2014年時点)、多くは在宅ケアを選択している。その在宅ケアを支える定期巡回・随時対応サービスは十分に普及しているとは言い難い。
◆2025年には、65歳以上の要介護要支援認定者数は全国で716万人(65歳以上高齢者の20%)、要介護3以上の高齢者数は252万人(同7%)に達すると推計される。仮に介護施設の定員数が現状から増えなかった場合(2014年のまま)、入所者を要介護3以上に限定したとしても、福岡、神奈川、千葉、沖縄、宮崎などの大都市近郊や地方都市では入所できない高齢者が増える。これらの地域で介護施設の整備が急務である。
◆また、2025年までに必要と思われる特養の総定員数について試算を行った。2025年に入所希望者(入所申込者)が全員入所できる場合、全国で131万人分の特養の総定員数が必要になり、また、入所申込者のうち要介護3以上のみが入所できる場合でも109万人分の総定員数が必要になると推計される。
◆2025年までの期間に限定した場合、大都市郊外や地方都市においても介護施設に余裕があるとは言えず、介護離職ゼロを目指すには、家族などによるインフォーマル支援が少なく済む介護施設の整備についても、計画的に進める必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
-
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日
中国:金融緩和など景気刺激策を発表も効果は?
人民銀行総裁が預金準備率の引き下げ、住宅市場テコ入れ策を「予告」
2024年09月26日
石破新政権誕生、経済政策の注目点は?
デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営に期待
2024年10月03日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
中国経済見通し:なりふり構わぬテコ入れ策発動
金融緩和、住宅市場テコ入れ策、株価対策、国債増発
2024年10月22日