大学進学時の人口移動抑止策は地方創生に有効なのか

『大和総研調査季報』 2018年春季号(Vol.30)掲載

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  • 経済調査部 市川 拓也

サマリー

地方から東京圏への人の転出が続いており、「地方消滅」の危機は現在も続いている。2017 年12 月にまとめられた「まち・ひと・しごと創生総合戦略のKPI検証に関する報告書」では、基本目標KPIである「地方・東京圏の転出入均衡」、施策のKPIである「自県大学進学者割合全国平均」ともに進捗がみられないとしていることから、自県大学への進学が進まないことが原因で地方・東京圏の間の転出入均衡が見通せない状況であるようにもみえる。

しかし、東京23 区の大学定員増加抑制にせよ、自県大学進学者割合の引き上げにせよ、大学進学時に東京側で人を受け入れない、地方から人を出さないといった施策は、地方・東京圏の転出入均衡策として効果的とは思えない。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略 (2017 改訂版)」には、東京圏の大学のサテライトキャンパス設置や単位互換による対流・交流の取り組み促進が盛り込まれており、従来の「囲い込み」型の発想から一歩抜け出ている点で注目できる。効果が疑われる施策は大胆に修正し、試行錯誤の中で、二の矢、三の矢を放つ必要がある。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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