サマリー
◆医療・介護が必要な高齢者の住まいについては、入院病床や介護施設の不足を背景に施設から在宅への移行が促されてきた。しかし、地域包括ケアシステムを支える人材不足等の影響から、「高齢者の地方移住」が提言され、議論を呼んでいる。
◆高齢者の移住を受け入れる側の地方では、東京圏への人口流出が止まらないなど、存続が危惧されている地域もあり、高齢者の流入を契機に、人口減少の抑制や地域経済の活性化に結び付けたい思惑がある。政府も『まち・ひと・しごと創生基本方針2015』を取りまとめ、新型交付金を創設するなどして地方創生を本格化させている。
◆そうした中、高齢者の希望の実現、地方へのひとの流れの推進、東京圏の高齢化問題への対応、といった主旨から、施設や人材に余裕がある地方で高齢者向けの継続的なケアを提供する「日本版CCRC」が検討されている。
◆「日本版CCRC」が参考としているのは米国のCCRCであるが、米国のCCRCは高額のコストと引き換えに、徹底的に質の高いサービスを追求している施設であり、日本国内でいえば、一部で見られる高額の有料老人ホームの方がイメージはむしろ近い。また、「日本版CCRC」で提供されるサービスとして、地域社会との関わりや共働、生涯学習などが検討されているが、東京圏の高齢者を惹きつける内容であるのか議論の余地がある。
◆医療・介護資源が不足する都市部から人口減少が進む地方へ高齢者を移住させることで、地方創生と高齢者問題とをひとまとめに片づけようとするのではなく、地域産業の競争力を強化する環境整備や安定的な雇用の創出、さらに大都市圏における地域包括ケアシステムを促すインセンティブの設定などを一つずつ議論していくことが重要だろう。
◆「日本版CCRC」については、高齢期の住まいのあくまで選択肢の一つであることに留意しつつ、コンセプトを明確に示す必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
地域別にみた中小企業の資金調達環境
信用保証協会保証付き貸付の相対的市場シェアに着目した競争圧力の検討
2026年04月15日
-
地方銀行と官民連携まちづくりの課題
無担保・無保証・低収益という事業特性を踏まえた「地域金融力強化プラン」の論点整理
2026年03月10日
-
地方銀行の再編効果
高度化する銀行業における経営統合の意味
2025年12月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

