サマリー
◆2024年4月1日、改正次世代医療基盤法が施行された(2023年5月26日公布)。これにより、協力医療機関等の電子カルテ情報等について、従来の匿名加工医療情報 に加え、新たに仮名加工医療情報 を医療分野の研究開発に二次利用できる環境となった。また、同法に基づく匿名加工医療情報と、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や介護保険総合データベース(介護DB)等の公的DBを連結解析できる状態で研究者等に提供することが可能となり、例えば、入院前後の受診等を踏まえた研究が行えるようになった。
◆今後、医療分野の研究開発を加速していくには、医療・介護関係の公的DBについても、仮名化情報を二次利用できるようにすることが重要である。仮名化情報を用いることで、治療や服薬の影響を、希少な症例なども含めて長期にわたって追跡調査・分析することが可能になる。連結可能な公的DBが一段と拡大していけば、ほぼ全国民の生涯にわたる、さらには世代をまたいだ研究開発も実現する。
◆ただし、公的DBの仮名化情報を二次利用するにあたっては、個人の権利利益の保護とのバランスが課題である。この点、二次利用に関する本人同意を取得しない代わりに、個人の権利利益を保護するための機関の設置や、データの解析環境に一定の制限を設ける方向性が示されている。
◆こうした環境が整備されることでヘルスケア産業の活性化等が期待されているが、医療等情報を提供する人々の十分な理解を得るためには、利活用の透明性を高めることに加え、二次利用による成果を医療の質の向上や効率化等という形で迅速に還元していくことが何よりも大切だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
-
健康経営で高評価を得るポイント
政策の方向性を踏まえた対応と、データ活用による効果検証が必要
2024年09月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日